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120日間の集大成がついにお披露目! XSCHOOL第二期 東京発表会レポート
2018年1月21日(日)、福井での発表会に先駆けてXSCHOOL第二期 東京発表会を開催。約120日間の道のりを経て、21名の受講生たちが生み出したプロジェクトが、ついに発表の日を迎えました。会場の「100BANCH」にはなんと100名以上の方にお越しいただき、熱気に包まれるなか受講生たちがプレゼンテーションを披露しました。今回はその様子をご紹介します。
発表会を目前に緊張感漂う受講生たち
福井での最終ワークショップ後も、試行錯誤を続けていた受講生たち。それぞれが納得できるプロジェクトを生み出すために、意を決して原点に立ち戻って考え直したチームもありました。
東京発表会当日も、会場では朝から受講生たちがプレゼンテーションの練習やスライドのチェックを行い、入念に準備を進めていました。
開場前には受講生、講師、パートナー企業、運営スタッフ全員が円陣を組み、パートナー企業の荒井章宏さんによる「頑張るぞ!」の掛け声で気合いを入れました。
さぁ、いよいよはじまります。
7チームによるプレゼンテーションがスタート
プログラムディレクターの内田友紀さん、多田智美さんの司会で発表会はスタート。まずは福井のまちの歴史や文化、そしてXSCHOOLの取り組みについて紹介していきます。
▲約120日前は福井に縁もゆかりもなかった受講生。XSCHOOLを通して福井のまちとの関係性を深めていった様子をスライドショーなどで紹介しました。
▲会場では「XSCHOOLのプログラムに興味がある」という方もたくさんいらっしゃいました。
プレゼンテーションでは、プロダクトをはじめ、新しい集いの場やコミュニケーションの仕組みにいたるまで、さまざまなアイデアを披露。そして、各チームがアイデアを生み出すなかで大切にしてきた想いも語られました。
▲小さな和菓子づくりを通して子育て中のお母さんの社会への第一歩を後押しする、新しい協働の場を考えたチーム
▲パートナー企業「米五」の味噌を使い、夫婦の対話を通して新しい家庭の味を見つけるキットを提案したチーム
▲子どもの“好き”を応援し、さまざまなかたちで“好き”を実践する大人を取り上げるメディアを考えたチーム
これまで約120日間にわたり、伴走してくださったパートナー企業のみなさんも、固唾を飲んで受講生たちを見守っています。
来場者の皆さんも、7チームのプレゼンテーションに真剣に耳を傾け、メモを取っている姿が印象的でした。
今回、東京発表会でレビュアーを務めていただいたのは、Webデザインやビジネスデザイン、コミュニティデザイン、空間デザインなど数々のプロジェクトを手がけ、デジタルものづくりカフェ「Fab Cafe」などを運営する、ロフトワーク共同創業者で代表取締役の林千晶さん。
▲林さんは昨年度の東京発表会でもレビュアーとして、鋭い考察でアドバイスをいただきました。
そして関西を拠点に建築、インテリアなどに関わるデザインや、ブランディングディレクションなどを手掛け、近年では地域再生などの社会活動にもその能力を発揮しているgraf代表の服部滋樹さん。京都造形芸術大学芸術学部情報デザイン学科教授としても活躍されています。
▲「僕もチームに入りたい」という発言も飛び出すなど、楽しいコメントで会場を沸かせた服部さん
7チームが発表するプロジェクトすべてにあたたかいエールと示唆に富むコメントをいただきました。
受講生たちによる渾身のプレゼンテーションが続くなか、休憩時間には展示ブースでも盛り上がりを見せていました。ここでは、各チームが約4ヶ月かけて生み出したプロジェクトの企画書やプロトタイプ(試作品)を披露。
プロジェクトに関わったメンバーから直接話を聞くことができるブースでは、プレゼンテーションで紹介しきれなかった想いや裏話などが飛び交い、多くの人だかりができていました。
トークセッション「XSCHOOLから見える未来」
発表会の後半は「XSCHOOLから見える未来」と題し、講師とレビュアーたちによるトークセッションが行われました。XSCHOOLのチームづくりやコミュニケーションの方法など、話題は多岐に渡りました。
――服部さん
どのプロジェクトも個性的で、チームとして仕上がっているなと思いました。ここまでチームを巧妙につくりあげるのは難しいと思うのですが、その秘訣は何ですか?
――講師陣
XSCHOOLのチームはバックグラウンド、年齢、出身地などを考え、講師やプログラムディレクターが決めました。しかしそれはきっかけの一つであって、チームの構成よりも、その後の「チームづくり」が重要だと考えています。3人は住む場所も生活のリズムもさまざま。コミュニケーションを重ねるなかで、時にはストレスを感じることもあったと思いますが、それを超えた関係性をつくってほしいという狙いがありました。
――林さん
そうですよね。今、世の中で「多様性を認める大切さ」が言われていますが、人と人が会った途端に「いいね!」と共感し合うのは、本当の意味での「多様性」ではないと思うのです。「なんでこれがいいと思わないの?」「だってさぁ……」とやりとりするプロセスにはストレスや筋肉痛のような痛みがつきもの。でも、そのなかでもやり遂げられる環境をデザインできているのが、このXSCHOOLの良いところなのでしょうね。
――服部さん
他者を受け入れるのは、とてもエネルギーがいることですよね。今の世の中って、自分は自分、他者は他者と境界線をはっきりさせるような生き方になりがちじゃないですか。でも、受講生のみなさんを見ていると、XSCHOOLに参加することで、これまでの自分の生き方を超えたかったのだろうなと思います。
――林さん
いい議論ができているチームは、アウトプットにもちゃんと表れているなと思いました。3人でアイデアを考えていると、当然意見が合わないこともあったはず。納得できない時も妥協せずにちゃんと伝え合うことで、プロジェクト自体が強度のあるものになっていると感じました。
――服部さん
チームで何かを生み出そうとするときには、誰かを傷つけたり自分が傷ついたり、そんなシーンがないと前に進まないこともありますよね。発表を聞いて、どのプロジェクトもどんな場面でそれが使われ、使うことでユーザーがどんな顔になるのかということまでちゃんと考えられていたので、とても親近感を持てました。
――林さん
誰を幸せにしたいか、という視点は社会をデザインする上でも重要だと思います。日本の企業でさえも苦労しているポイントです。
受講生とともに伴走してきた講師たちはXSCHOOLをこのように振り返ります。
――原田祐馬さん
XSCHOOLは自分たちの身の回りの課題から社会の課題につなげていかないと、自分事としてプロジェクトを続けていくことが難しいと思うんですね。一期生も二期生もそのことをわかっているものの、そのやり方がわからず悩み、自分たちの課題を絞り出すことに時間がかかりました。時間がかかることはむしろいいことだと私は思っています。
受講生たちがコミュニケーションの筋肉痛を起こしたのであれば、講師たちは胃潰瘍ですね(笑)。さすがにこの段階でも振り出しに戻ったチームがあったので、XSCHOOLで初の家庭訪問を体験しました(笑)。
――高橋孝治さん
例えば「高齢者」と一言でいっても、具体的にはどんな人?と、より解像度を上げるための質問を投げかけていましたね。原田さんも仰っていましたが、アイデアの起点は自分やその身の回りからしか生まれません。今日発表されたプロジェクトのなかには、自分の家族や友達など、身の回りの人たちをターゲットにしたアイデアがいくつもあったかと思います。僕自身も受講生のマインドを大切にし、XSCHOOL中は常に自分に問いかけていましたね。
――萩原俊矢さん
XSCHOOLでは、3人の興味や関心を一つの方向にすりあわせていく作業がとても難しいなと思っていました。僕が心がけていたのは「あまり具体的な答えを言わない」こと。きっと3人の答えがあるはずなので、自分たちの物差しで考えてもらい、そこに燃料をくべていくことに専念していました。ワークショップでは自分のすべてをさらけ出す意味で「心のパンツを脱ぐ」という表現をしていたのですが、それぞれのチームが心のパンツを脱ぐためにかなりの時間を費やしたのではないかと思っています。
最後にレビュアーのお二人から受講生に熱いエールをいただきました。
――服部さん
今日の発表会には、今の社会で大切にしたいキーワードがあふれていました。そのキーワードをもとに、どんなアクションを起こしていくのか。それがこれからの社会をつくる一歩になると思います。今日が本当のデビューですね!
――林さん
受講生たちがコミュニケーションの筋肉痛、講師は胃潰瘍……まさにそのかいがあった素晴らしい発表会でした。プロジェクトを生み出すのは「楽しい」だけではないけれど、どのプレゼンテーションも希望に満ち溢れていたと思います。次の福井の発表会も頑張ってください!
▲レビュアーのお二人からのエールに笑顔になる受講生たち
発表会の最後は福井市の地酒を片手に、会場のみなさんと乾杯! 閉会いっぱいの時間まで来場者も受講生も話が尽きませんでした。
XSCHOOLの一つの区切りとなった東京発表会は、大盛況のうちに無事終了することができました。レビュアーのお二人をはじめ、来場者のみなさんからさまざまな反応をいただき、受講生も大きな手応えを感じたのではないでしょうか。ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。
次回は福井発表会の様子をご紹介します。
(text:石原藍 photo:片岡杏子)