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Interweave2022

【INTERWEAVE2022】レポート 第4回 最終報告会

 

福井を中心に展開するパートナー企業とともに事業創出に取り組むプログラム「INTERWEAVE(インターウィーブ)」。2023年2月18日(土)、プロジェクトの最終報告会が行われました。参加したのは全国公募で集まった12名のメンバーの皆さんです。個性豊かなメンバーが揃う3つのチームで、どのようなイノベーションが生み出されたのでしょうか。


メンバー(左から):蔵田久美子さん、山田耕一郎さん、山田龍児さん、山田孝雄さん、吉澤宏太さん、金井吉和さん(発表会当日はオンライン参加)

 

最初の発表はイクラボチーム。2023年春にオープンする新店舗「ダイナソーベース」の立ち上げ支援に取り組みました。

 

「小学校に行くことが不安な子供たちも多い時代。自分で選んだお気に入りのランドセルを使うことで、自己肯定感が高まり不登校も減るのではないかと考えます。」と話すのはイクラボの山田社長。新しくオープンする店舗をオリジナルのランドセルを販売する「恐竜専門店」にしたいと考えていました。しかし、具体的な構想はまったく白紙の状態。そこで、今回のプロジェクトでは、新店舗のビジョン・ミッション作りからスタートしました。

 

ある調査によると、ランドセルの購入価格は近年約2,000円ほど上昇し、価格よりもデザインが重視される傾向にあるのだそう。福井県のキラーコンテンツである「恐竜」をコンセプトにした「恐竜ランドセル」は、品質からデザインまでこだわった、イクラボのオリジナル商品です。よいものを手に入れたいというニーズとマッチしており、多くの販売数が見込めると考えます。




そこで、課題はダイナソーベースの顧客接点の低さではないかと仮説を立てました。ランドセルを購入する年齢の子どもたちだけでなく、幼い頃からダイナソーベースのファンになって欲しい。ペルソナ分析や市場調査などを行い、ダイナソーベースの運営施策を4つ考えました。

 

ダイナソーベース・4つの施策
1.恐竜グッズの商品企画

2.早期ファンづくりのためのアンケート項目定義

3.ファンコミュニティーの仕組み定義

4.福井県立大学恐竜学部との連携




店舗で扱う恐竜グッズは、初めはセレクトしたものを中心に、将来は福井の伝統工芸を取り入れたオリジナル商品も企画したいそうです。アンケートはこの春の展示会から実施し、ファンコミュニティもオープン目前。福井県立大学恐竜学部とのコラボレーションも予定しており、これからますます目が離せません。

 

「子どもたちが楽しく過ごせる社会をつくる」というビジョンを掲げて進み始めたダイナソーベースのプロジェクト。未来を担う子どもたちにワクワクを届けていきます。

 

メンバー(左から):笠松理衣さん、今井達也さん、森雅信さん、岡田直也さん、根岸良輔さん、木村輝彦さん

 

次の発表は森八大名閣チーム。和菓子の需要が減っている時代に、コロナ禍でさらに危機感を持ったという森社長。偶然にプロジェクトのことを知り、参加を決めました。「お菓子はなくなっても死なないけれど、困る人はいる。お菓子は心の栄養。特別な日に豊かな気持ちになるような商品を届けたいです。」という森社長の考えは、メンバーの心に深く刺さります。その思いを実現するためには何をすればよいのか....和菓子や企業を「知る」ことからスタートしました。


まずは、県内にある全ての店舗を訪れて、戦略や強みをリサーチ。森八大名閣のこだわりをじっくり学びます。働く方のことを「知る」ために、森八大名閣の従業員とメンバーで交流会も実施しました。メンバーの印象に残ったのは、森八大名閣の地元での知名度や信頼度の高さ。 幼少期の経験が入社動機になっている方もいたのだそうです。

 

さまざまなリサーチを経て出した答えは、「中長期的な地域性を発展させるお客様作りをする」ということ。「周りの人に森八大名閣のお菓子を進めたい」と思ってくれるような、コアファンを増やします。

 

目標として定めたのは、福井の地場産業を集結させたキッザニアモデルを作ること。将来の顧客となる子どもたちをターゲットにします。自社のお客様を増やすだけでなく、中長期的な働き手の確保や、福井全体の経済発展に貢献することが狙いです。ワークショップや、森八大名閣ブランドでのリリースをスタートとし、5年後の常設施設のオープンを目指します。



さまざまな準備を重ね、2月にはワークショップのトライアルを行いました。森八大名閣で人気となっているのが、ビーントゥーバーのチョコレート。若い層にもファンが多い新たな主力商品です。今回はチョコレート専門店「日和」を会場にして、オリジナルのチョコレートを作りました。参加したのは県内に住む高校生の皆さん。ワークショップはとても好評で、「チョコレートの知識を深められて、とても勉強になった、より好きになった」などのコメントが寄せられました。今後は、運営体制の検討やブラッシュアップなどを行っていくそうです。

 

さっそくプロジェクトが動き出している森八大名各チーム。「福井を日本一の故郷にしたい」という森社長の思いとともに、和菓子の世界に新たな挑戦をします。

メンバー(左から):松本大輝さん、田島琢巳さん、角谷恒彦さん、杉山哲也さん、尾崎洋甫さん

最後の発表は角文チーム。「文房具で社会に貢献し、福井から日本を元気にしたい」という角谷社長。チームのメンバーも思いに共感し、プロダクト作りに焦点を当ててスタートしました。メンバーでさまざまなアイデアを出し、ディスカッションを重ねる中で見えてきたのは「整う」というキーワードでした。

 



しかし、「整う」といっても、それを言語化することができなかったメンバー。福井県にある禅の道場・大本山永平寺を訪れます。そこで座禅体験をしたメンバーが感じたのは、「整う」ことやそこまでの「所作」が重要ということ。そこからインスピレーションを受け、「整うための作法」を文具として形にできないかと考え始めます。


 

角文の商品は、品質、機能美、デザインにこだわりがあり、持つ人にも自信を与えてくれるものばかり。今回はさらに踏み込んで、「  ”文具”に留まらない、書く行為による”心”への価値を提供したい」と考えました。書くという行為を通じて、自分の心を整え向き合い豊かな人生を送れるような文具を目指します。



ディスカッションを重ね生み出されたものが、坐禅体験を文具に置き換えた「禅ノート」です。自社の職人が裁断から縫製まで一貫して行えるのは角文の強みの一つ。自社のヒット商品であるONFILEをベースに、「整う」ための仕掛けを盛り込みました。雑音をオフにして行う書く前の「所作」から、上質な和紙とペンで書いて「向き合う」、整うための文具が生み出されました。

 

プロダクトが完成に近づく中、課題になってきたのがノートの使い方。書くことが習慣化していない人も多く、何を書いてよいかわからないという声も上がります。そこで考えたのが、自分と向き合う「1日1問い」ができるWEBサイト「問いバンク」。購入者限定でのサービス提供を考えているのだそう。今後はカバーやペンのバリエーションを増やし、「書いて整える」文具のブランド化を目指します。

 

文具の真の価値を提供したいという角谷社長の思いが、福井らしさあふれる「禅」と結びつき、素晴らしいプロダクトを生み出します。

 

成果発表を終え、パートナー企業の方にお話をいただきました。

 

イクラボの山田社長


「日本には恐竜専門店がなかったので作りたいと思ったのがきっかけでした。ビジョンを考えるなどゼロからスタートしたのに、120日間でこんなに形になるとは思いませんでした。これは私たちだけでは実現できなかったし、皆さんのスキルやアイデアのおかげだと思います。来週から全国の展示会もスタートし、ダイナソーベースのプロジェクトが始まります。ファンコミュニティなども楽しみですし、恐竜王国福井の地の利を活かしたことができそうです。」

森八大名閣の森社長

「何をやるかわからないけど面白そうだな、という理由でスタートしました。毎週のように重ねるミーティングは新鮮で、自分の中にあったモヤモヤが解消されていくよい時間でした。壮大なテーマに挑み、社員もとても刺激を受けていたようです。普段は接することのない、大手企業の方がどんな仕事をしているか見られたのも学びですね。スピード感や時代の先取りをしなくてはならないと思いました。今後もお付き合いができたら嬉しいですし、何らかの形で恩返しができるような企業になりたいです。」

 

角文の角谷社長

「今回のプロジェクトでは、バラバラに考えていた僕の内面的な思考をアウトプットして、まとめ上げていただきましたね。自分のやりたいことや思いを具現化していく作業を経験しました。書いていくことでモヤモヤしている思考が晴れ渡っていく。書く行為にはそれができるのだと改めて思いました。パートナー企業にとってはこれが終わりではありません、ここからがスタートです。私たち参加企業同士も、「ちゃんとつづいてるんやろな?」と確認し合いながら、共に福井を活性化して発信を続けていきたいです。」





発表会の後には参加者での交流会が設けられました。実際のプロダクトに触れたり、完成までのエピソードを語り合ったりと、終始盛り上がっていたようです。

 

福井の企業とともに事業創出に取り組んだ120日間。参加者メンバーそれぞれの思いが、新たなイノベーションを生み出しました。地域や企業のリソースとお互いのスキルをかけ合わせ “ともに織りなす未来” を考える「INTERWEAVE」。本当の物語はこれからがスタートです。

 

(Text:Mayu Nishikawa Photo:Ikki Kurahashi)


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