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XSCHOOL2019

福井に根づかせたい未来とは【XSCHOOL福井プレゼンテーション前編】

2016年からスタートしたXSCHOOLは、福井市がこれまで培ってきた歴史や文化、産業などの資源を活かしながら、ともに考え挑戦できる舞台をつくろうと、毎年プログラムを変遷しながら継続してきました。


4年目となる今年度は、東京、大阪、福井から応募したメンバーとパートナー企業3社のメンバー、そして過去のXSCHOOL/XSTUDIOに参加したOB・OGメンバーを合わせた28名が参加。

2020年2月8日に開催された「XSCHOOLプレゼンテーション福井」では、東京会場に続き、6チームが約120日間をかけて練り上げたプロジェクトを発表しました。

 

会場となった日華化学NICCA イノベーションセンターでは、朝からメンバーたちが慌ただしく準備。ギリギリまで発表や展示のブラッシュアップを続けていました。


開場とともに受付には続々と来場者が。福井県内はもちろん、XSCHOOLのこれまでの取り組みを見守ってくださっていた県外の方などたくさんの方が訪れ、会場は次第に熱気を帯びていきました。

 

福井市総務部部長の前田和宏さんのご挨拶とともにプレゼンテーションが開幕。
まずはプログラムディレクターの内田友紀さんと多田智美さんから、今年度のXSCHOOLの様子が紹介されました。

▲福井市総務部部長 前田和宏さん

 

今年度のXSCHOOL は「未来の土着」がテーマ。プログラムのなかでは、2つの視点を大切にしてきました。

1つは「プロジェクトの立ち位置」。地域、国、世界、地球規模と視点を行き来し、過去・現在・未来に思いを馳せながら、自分たちの実現したいプロジェクトについて思考を巡らせてきました。

 

もう1つは「オーナーシップ」。普段の自分の肩書きや所属を横に置き、自分自身の感覚を見つめながらプロジェクトに向き合うことも大切にしてきました。

▲今年度のXSCHOOLもさまざまなドラマがありました

 

今回、福井プレゼンテーションのゲストレビュアーとしてお越しいただいたのは、このお二人。

テックカルチャー・メディア『WIRED』日本版編集長として、「ニューエコノミー」「デジタル・ウェルビーイング」といった世界の最先端の動きを見つめた特集を世に送り出している松島倫明(みちあき)さん。

▲松島倫明さん。ベストセラー『FREE』『SHARE』『MAKERS』など、手がけた書籍も多数

 

そしてコミュニティデザインの先駆者として、さまざまな地域に寄り添いながら住民参加型のまちづくりを手がけているコミュニティデザイナーでstudio-L代表の山崎亮さん。

▲建築、デザイン、ランドスケープとあらゆる分野に長けた山崎さん。近年は社会福祉士として福祉領域にも携わっています

 

お二人からどんなレビューが飛び出すのか楽しみです!

 

子どもたちが日常で探究する場所「こどもかがくピクニック」

最初に登場したのは、化学メーカーに勤める研究者と文化人類学者、コピーライター、デザイナーで結成したチーム。


リサーチで、福井にはオンリーワンの技術を持つ企業が多いことを知ったメンバーたち。そこで、福井の技術を使い、子どもたちが日常を探究する「こどもかがくピクニック」というプログラムを提案しました。

▲ひらがなの「かがく」にしたのは、身の回りのことを広義の科学で探究したいという狙いから。また、外に出て体感することを大切にしているため「ピクニック」と名づけました

 

実験教室のような場所は世の中に増えているものの、実際の技術者から教えてもらえる場は多くはありません。

そこで株式会社日華化学の研究者たちとともに、小学校高学年を対象にした「身近な植物で布が染まるか」というプレイベントを実施。

▲なんと、プレイベントの実験ではほとんど染まらなかったそう。しかし、そのことが子どもたちの探究心に火をつけました

 

プレイベントを通して、「かがく」の視点をプラスすることで世界が広がる手応えを感じたメンバーたち。子どもたちの反応が新たな研究のヒントになることもわかりました。

 

今後は繊維、電子部品など分野を問わず、あらゆる企業の技術者を集い、定期的にピクニックを開催したいそう。

いずれは福井のまち全体を大きなラボにしたいとメンバーたちは熱く語りました。

 

レビューでは山崎さんから「講師の集め方やプログラムの質の担保をどうするか」、松島さんから「子どもの好奇心と企業を結びつけるにはテーマの内容を編集することが大切」とアドバイスが。これからどんなピクニックが開催されるのか、とても楽しみです。

福井の石が使われ続ける未来をつくる「笏谷石バンク」

教育系NPOスタッフと建築士、プロダクトデザイナーらのチームは、福井市の足羽山付近で1500年前から採掘されてきた「笏谷石(しゃくだにいし)」という石に注目。

笏谷石は家の基礎や石垣など、福井のまちではさまざまな場所で使われていましたが、1998年に採掘が終了。今では建物の解体で出てきたものや石材店の在庫しか残っていないことをリサーチで知りました。

 

水に濡れると深い青緑になることから、別名、「越前青石」とも呼ばれている笏谷石。

実は今回XSCHOOLではじめて笏谷石を知った福井県出身のメンバーも多く、調べていく度にその魅力に引き込まれていったそう。

 

この石文化が持続的に残る未来をつくりたいと、笏谷石を持っている人と使いたい人をつなぐ「笏谷石バンク」を提案しました。

▲笏谷石は江戸時代、日本海航路を巡った北前船によって、福井から全国各地に運ばれていました

 

現在、笏谷石を使おうと思うと、自分自身で石を持っている人を探さなくてはなりません。

そこで、WEBサイト上で笏谷石の取得情報を公開し、ECサイトとして販売。石の流通が活発になることで、認知度が上がり、歴史的価値と経済的価値が戻ればと期待を込めました。

▲コースターや傘立てなど笏谷石を使った商品開発も進めていきます

 

「すでに空き家バンクという仕組みができているが、登録者が少ないという課題が生まれている。笏谷石の価値に気づいていない人にどう伝えていくか。石を引き継いでもらいたいという気持ちにさせる人間力が大切」と山崎さん。

松島さんからは「地球の資源を取り続けてきた社会において、笏谷石バンクは新たなプロトタイプになるはず。それぞれの石にIDをつけて、石のストーリーやヒストリーを価値として付与すると、残したい人が増えてくるかも」とアドバイスをいただきました。

いらなくなった本が誰かの必要な本になる「喜贈文庫」

建築を学ぶ学生とデザイナー、会社員で構成されたチームでは、古紙の回収やリサイクルを手がけるパートナー企業・株式会社増田喜をリサーチ。

県内21箇所の食品スーパー等に設置されている増田喜のエコステーション(回収拠点)では、新聞や段ボールなどさまざまな古紙に加えて、捨てられる本が数多くあることを知りました。

本のなかには、大事に残していたと思われるものやきれいな状態のものも多かったそう。

 

そこで、いらなくなった本を「捨てる」「リサイクルする」に加え、「そのまま贈る」という新たな選択肢を提案する「喜贈文庫」を発表しました。

▲「誰かにとって必要ないものでも、ほかの誰かにはほしい本かもしれない」という仮説から生まれました

 

その内容は、増田喜さんの福井営業所のエコステーションに「喜贈ベース」を設置し、そこで回収した本を、必要としている場所にお届けするというもの。

 

実際に、福井市内の幼稚園に本を喜贈したところ、園児や先生から大変喜ばれたそう。

 

本を手放す人・本をもらう人・増田喜さんという三者に喜びをつくり、社会貢献にもつなげたいと語るメンバーたち。

将来的には「喜贈文庫ベース」が新たな地域コミュニティの場になれば、と次のビジョンも語りました。

▲「喜贈文庫」の仕組みを寸劇で紹介

 

レビューでは松島さんから「本をつくる者としては嬉しいプロジェクトだが、『新しい本と再利用する本が何を生み出しているのか』という視点を持つことも必要。すでにリユースは浸透しているので、本の目利きを工夫してみは」という雑誌編集長ならではのアドバイス。

山崎さんは、イギリスのチャリティショップの例を挙げながら、「本当に必要な本を必要としているところに届けるためには、地域に入り込むコーディネーター的な職能の存在が必要」とコミュニティづくりの視点でアドバイスをいただきました。

地域の人と協働し、新たな生業をつくる「ノカテ」

過去のXSCHOOL/XSTUDIOの参加メンバーで構成されたメンターチームは、日本海側の越前海岸を舞台にしたプロジェクトを発表しました。

越前海岸は福井県の花にもなっている「水仙」の群生地。冬になると日本海側の斜面に咲き誇る水仙は福井の文化的景観として広く知られています。

主に華道用などに出荷される水仙ですが、急斜面での草刈りや改植、収穫は重労働なため、農家の高齢化や担い手不足が深刻に。その景観の存続が危ぶまれている状況にあることを、フィールドワークを通して知りました。

 

そこで、「消費しきれない作物や管理しきれない土地=余分」、「暮らす人の時間的・精神的な余地・未来への期待=余白」と考え、余分と余白をつなぐことで「世代と地域を超えたこれからの生業と場をつくりたい」と提案。

▲「ノカテ」は「誰しもが誰かにとっての糧である」という想いから生まれた言葉

 

地域の元観光施設にあるキッチンで水仙を蒸留し、エッシェンシャルオイルから展開するさまざまな商品開発や、水仙の農作業小屋を「コロニーヘーヴ(デンマークの人たちが週末を過ごす場所)」のような滞在拠点にするなど、地域と継続的に関わりながら世代と地域を超えた生業をつくっていきたいと語りました。

▲水仙は花が咲くと市場価値がなくなってしまうそう。しかし、咲いた後も香りが良いこの美しい花を使わない手はありません

 

最後はメンバーが考える壮大な未来予想図でプレゼンテーションを終えた「ノカテ」チーム。

 

しかし、レビューでは「雰囲気を伝えたいのか、本気でコミットしたいのか」と覚悟を問われることに。「プロジェクトのキーワードでもある『余分と余白』という言葉は一見クリエイティブに聞こえるが、地域の人が使える言葉で語ることが大切」と、数々の地域に寄り添ってきた山崎さんならではの、目の覚めるようなアドバイスが印象的でした。

 

ものづくりで地域と世界がつながる交流拠点「Tonkan terrace」

メンバー全員が福井出身東京在住というチームでは、当初、福井の銘店「やきとりの秋吉」の串から着想を得て竹の研究を進めていました。ところが、あるメンバーの家族の存在によって、プロジェクトの方向が大きく転換することに。

車椅子生活を送るお父さんと、介護で支えるお母さんを持つあるメンバーは、「遠く離れている両親が家庭に閉じこもることなく、地域と関わり続けてほしい」という思いを日頃から持ち続けていました。

 

また、建具職人であった祖父の姿を見て、木工に囲まれた環境で育ってきたという背景から、2つの背景を組み合わせることに。ものづくりを通した地域の交流拠点「Tonkan terrace」を発表しました。

▲「Tonkan terrace」はトントンカンカンものづくりの音が聞こえるテラスを通じて地域とつながる、という意味が込められています

 

場所はメンバーの実家敷地内にある作業小屋。祖父が使っていた木工道具も当時のまま残っています。

ここに3Dプリンターやレーザーカッターなど最新機械も導入。

車椅子生活であっても自分自身で身の回りのことができるよう「自助具(日常生活を容易に行えるよう補助する道具)」をつくり、そのデータを世界中のネットワークで共有することも可能です。

▲3Dプリンタを使えば、一人ひとりの状態に合わせた自助具をカスタムすることが可能

 

テラスではものづくりだけでなく、ワークショップやイベントを開催できるスペースもあるため、「ものづくりは敷居が高い」と思っている地域の人も気軽に訪れることができるのも魅力の一つ。

 

両親が社会とつながり続けることが可能になり、さらに、ものづくりの面白さに目覚めた子どもたちが地域産業を支えるようになれば、さまざまな期待を語りました。

 

「個人的には一番好きなプロジェクト」と語った山崎さんは「敷地の樹木を低く切ることで、外から見えるようになり、屋内の様子も興味を持つようになる」とランドスケープの視点からアドバイス。

松島さんからは「建物のなかで何が行われるか、コンテンツが重要。福井ならではの材料を使ってものづくりをすると独自性が出る」と、事例をまじえながらコメントをいただきました。

 

SNSホストファミリーから始まる新しい共生の姿「Talk Stay」

マーケター、デジタルプロダクトデザイナー、学生、会社員の5名からなるチームでは、多様性が認められる社会について考え続けてきました。

「多様性」をキーワードにするなかで挙がったのが、地域に暮らす外国人の存在。福井に住む外国人は約1.5万人で、多くを技能実習生が占めています。

 

日本の企業の技術を学ぶため、はるばる海外からやってきた彼らの生活は知っているようで知らないもの。

リサーチしてみると、調理器具の数がたくさんあったり、自転車での行動範囲が日本人以上に広かったりなど、意外な姿を知ることができました。日本の生活をエンジョイしている一方で、日本人との接点がほとんどないこともわかったそう。

 

同じまちに住んでいるのに接点がないなんてもったいない! そこでたどりついたのは、日本人も海外の人も垣根を越えて、気軽にチャットで相談できるアプリ「Talk Stay」です。

▲アプリの登録は招待制。同じまちに住む日本人と外国人がつながり、何気ない会話から新たな交流を生み出します

 

アプリには自動翻訳機能がついており、言葉の壁を超えて気軽にチャットができる仕組みに。

お互いの文化の違いを楽しみながらお困りごとにも寄り添う、新しいホストファミリーのかたちを提案した「Talk Stay」は、登録数を増やすためのステッカーなども制作し、2020年8月の本格稼働を目指します。

▲ユーザーインタビューも繰り返し、海外の人の生の声を取り入れています

 

レビューでは、「違う言語の人とのコミュニケーションがワクワクするきっかけになりそう」と好評価の一方、「アプリにするのが本当によいのか」と鋭いツッコミも。文化を教える、という一方通行の関係ではなく、それぞれの文化をお互い学び合える関係が望ましいとアドバイスをいただきました。



レポート後半では、ゲストレビュアーを交えたラウンドトークの模様をご紹介。
盛り沢山の「XSCHOOL福井プレゼンテーション」はまだまだ続きます!

 

text:石原藍 photo:片岡杏子


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