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パートナー企業をたずねて【XSCHOOLトレジャーハンティング・前編】
2016年、福井市で次代のデザイナーを育む小さな教室「XSCHOOL」がスタートし、今年で4期目を迎えました。今年度は3つのパートナー企業から各社数名の社員が参加し、各地から集うメンバーとともにプロジェクトづくりに挑みます。
10月末から始まるワークショップに先立ち、企業メンバーとディレクターチームが「トレジャーハンティング」と題してパートナー企業をリサーチ。その様子と各パートナー企業についてご紹介します。
資源のリサイクルを通して福井の紙ゴミゼロを目指す「株式会社増田喜」
最初に訪れたのは、株式会社増田喜。古紙を中心に再生資源卸売業を手がけている企業です。
増田喜の創業は1948年。家庭やオフィスなどさまざまな場所で発生した古紙を資源として回収・分別・梱包し、製紙工場へ製紙原料として送り届ける「古紙回収サービス」を福井中心に行っています。
▲企業や事業所、工場に訪問し、小ロットの資源でも回収を行う「エコ紙くらぶ」というサービスが好評
「福井県で燃やされている紙ゴミをゼロにする」をモットーに、古紙リサイクルを進めている増田喜。近年、ペーパーレス化が進んでいるものの、依然として紙資源回収は深刻な問題です。例えば、福井市の燃えるゴミの処理費用は年間およそ30億円。そのなかでリサイクルできるはずの紙の割合は1/3にものぼるそう。燃えるゴミとなってしまっている紙ゴミを資源として回収することで、処理費用の削減はもちろん、環境保全の一端を担いたいと考えています。
▲回収された古紙は段ボールや新聞、雑誌などに分別され、製紙工場に送られています
増田喜の事業のなかでも、最近特に注目を集めているのが、機密抹消事業です。シュレッダーを搭載している「エコポリスバン」という車で依頼された企業を訪問し、その場で機密書類を処理。個人情報保護が叫ばれているなか、安心安全に機密文書を処理できるとニーズが高まっています。
▲シュレッダー処理された文書はトイレットペーパーなどに再生
また、小・中学生たちに分別についての知識を深めてもらおうと「エコ紙マン」というキャラによるリサイクル教室も実施。子どもたちの環境保全意識向上にも努めています。
▲親しみやすい「エコ紙マン」は子どもたちからも大人気
▲地域ぐるみでリサイクルを推進していきます
まだまだ回収できる余地が残されている紙資源をどのように効率よく回収するか、どうすれば多くの人たちの意識を変えることができるかなど、さまざまな課題に挑戦している増田喜。XSCHOOLでは、「リサイクル」という分野をどのように掘り下げていくのでしょうか。
企画から販売まで多様な細幅織物を一貫生産する「株式会社米澤物産」
次に訪れたのは、福井市八重巻に本社を構える「株式会社米澤物産」。織物のなかでもテープやリボン、組み紐といった「細幅織物」に特化し、企画・製造・染色・販売までを一貫して行っています。
国内生産の70%と圧倒的なシェアを誇る米澤物産の細幅織物。その大部分がインテリア資材で、カーテンやブラインドの紐に使用されています。大手メーカーからのOEMが主流でありながらも、常にメーカーマインドを忘れることなく製品開発を積極的に進めており、産業資材分野やメディカル分野など新たな分野の開拓にも力を注いでいるそうです。
▲こちらはブラインドに使われるラダーコード。名前の通り、まるではしごのよう
▲畳の縁に使われている複雑な柄の細幅織物も、米澤物産の技術であればお手の物
多品種、小ロット、そしてクイックレスポンスという時代のニーズに対応するため、設備の拡大も積極的に進めてきました。福井市にある第1・第2工場をはじめ、平成14年には中国浙江省にも生産会社を設立。生産規模に加え、その品質の高さは国内でも高い評価を受けています。
▲染色部門、織布部門と少しずつ規模を広げ、今では国内トップクラスの生産規模に成長
現在66名の社員が在籍している米澤物産では、若手社員も多数活躍。新商品の開発や新ブランドの立ち上げを目的としたプロジェクトチームも若手社員が中心となって進めています。「XSCHOOLを通して、細幅織物や繊維業界の可能性を広げていきたい」と意気込む米澤物産のみなさん。ワークショップを経て、これからどのような化学変化が起きるか楽しみです!
界面化学の技術でオープンイノベーションを起こす「日華化学株式会社」
最後に訪れたのは、界面化学の技術をコアに化学製品と化粧品を手がける日華化学株式会社。繊維産地である福井において、加工の工程で必要とされる繊維油剤の開発からスタートし、繊維加工用薬剤では国内シェアナンバーワンの実績を誇ります。
▲国内だけでなく海外に12拠点を有する国内トップクラスの化学メーカーとして成長
界面化学とは、水と油など、本来混じり合わない性質のものに働きかけ、性質を変える化学の分野。その技術を幅広い分野に応用し、現在では金属加工、紙・パルプ、クリーニング業界向け薬剤や化粧品など、多岐にわたる製品を開発しています。
▲一見馴染みのない界面化学の技術ですが、身近なところで使われています
日華化学の開発力を推進しているのが、2017年に11月に新設した「NIC(NICCA イノベーションセンター)」。建築家の小堀哲夫氏が設計を手がけた同施設は、社内外でのオープンイノベーションを加速させる研究開発拠点として、国内外で多数の建築賞を受賞するなど大きな話題になっています。
▲9月に行われたXSEMIの会場にもなりました
4階建の建物内には研究所のほか、技術紹介ブースやスタジオサロン、カフェテリアなどを配置。社員の顔が見える風通しの良いフリーアドレスのワークスペースでは部署を超えた交流が活発になるなど、社員の働き方にも大きな変化が現れているそう。
▲日華化学の社員の方に案内していただきました
実は昨年度のXSCHOOLやXSTUDIOに会場パートナーとして協力していただいていた日華化学のみなさん。今年度はパートナー企業として本格的に参画することになりました。これからの約120日間、年代も職業も異なるメンバーたちとどのようなイノベーションを起こしていくのか、期待が高まります。
後編では、今年度XSCHOOLアドバイザー・川崎和也さんと、地域の土着性に秘められた可能性について考えていきます。
text:石原藍 photo:片岡杏子