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XSCHOOL2019

地域の土着性が未来に問いを投げかける【XSCHOOLトレジャーハンティング・後編】

XSCHOOLトレジャーハンティング・前編では、3つのパートナー企業についてご紹介しました。リサーチ中には今期のXSCHOOLのアドバイザーでスペキュラティブ・ファッションデザイナーの川崎和也さんにも登壇いただき、ご自身のユニークな活動や福井のフィールドに秘めた可能性について語っていただきました。

■川崎和也さん
1991年生まれ。スペキュラティヴ・ファッションデザイナー/デザインリサーチャー。Synflux主宰。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科エクスデザインプログラム修士課程修了(デザイン)、現在同後期博士課程。ファッション界のノーベル賞といわれるH&Mファウンデーション「第4回グローバル・チェンジ・アワード」のアーリーバード特別賞を受賞。

「スペキュラティブ」とは?

はじめに、馴染みのない「スペキュラティブ」という言葉からご紹介しましょう。「スペキュラティブ」とは日本語で「思索する」という意味を持ちます。RCA(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)のアンソニー・ダン教授によって「問いを投げかけるデザイン」の意味を持つ「スペキュラティブデザイン」という言葉が提唱されました。

スペキュラティブ・ファッションデザイナーである川崎さんの活動はとてもユニーク。テクノロジーやサイエンスなどあらゆる領域を横断しながら、世の中へ問いを投げかける取り組みを行っています

「ファッションというと、マネキンやトルソーに華やかな衣装を着せた現場を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、私の活動場所は主に大学の研究室なんです」と語る川崎さん。そのアイデアは、まさにこれまでのファッションの概念を覆すようなものばかりです。

 

健康食品のあの素材が服に!?

最初に紹介していただいたのは、バイオテクノロジーと素材開発を融合した「バイオロジカル・テイラーメイド」。健康食品としても有名な発酵飲料の「コンブチャ(紅茶きのこ)」からバイオ素材を生み出し、着る人の体型にぴったりフィットした服をつくるプロジェクトです。

▲バイオ素材から誕生したブラウンのジャケット

コンブチャを培養させると、酢酸菌やイースト菌の作用によりセルロースが誕生。さらにそのセルロースを乾燥させることで、レザーのようなテクスチャと可塑性を実現したバイオ素材が生まれました。

▲実験中はなんと自宅にプールを設置してコンブチャを培養させていたそう

「バイオロジカル・テイラーメイド」は、ファッション業界において素材と関わるプロセスを変化させた新しい試みとなり、数々の賞を受賞しました。また、動物や植物、微生物との新たな関係性を築く素材開発の一例としても注目されています。

環境に配慮し、残布ゼロを実現したプログラム

次にご紹介いただいたのは、布の廃棄を減らした「アルゴリズミック・クチュール」という取り組み。

▲生地裁断の際、一切の無駄な布が出ない「アルゴリズミック・クチュール」

近年、地球のサスティナビリティ(持続可能性)が注目されるなかで、ファッション業界に置ける布の廃棄問題は深刻になっています。特に、二次元で構成される生地を使って曲線が多い婦人服をつくろうとすると、どうしても無駄な部分が出てしまい、使用した布の15〜20%は捨てられてしまうそう。そこで、ファッションとAI(機械学習)を融合させ、コンピューターを使ったアルゴリズムにより、着用者の3Dデータに基づいて身体寸法ぴったりの型紙を自動作成。廃棄物の削減を実現しました。

 

このほかにもファッションとウェアラブルテクノロジーを融合した取り組みとして、高齢者の多様なニーズに適応できる衣服や都市の景観のなかで新たな遊び方を提案する衣服など、未来の暮らしが変わりそうなプロジェクトもご紹介いただきました。

高齢者の変化するニーズをサポートする未来の衣服「Computer-obaachan」

問いを投げかけるにはどうすればいいのか

川崎さんの「未来に問いを投げかける」プロジェクトの数々に、みなさん興味津々の様子。

では、福井というフィールドのなかで“問いを投げかける”プロジェクトを生み出すにはどうすれば良いのでしょうか。

川崎さんは、「市場や地域性からもう一歩踏み込んだ、この土地でならではの“土着性”を考えることが大事」だと語ります。

土着、すなわち過去から現在に至るまで福井で脈々と息づいていたものとは何なのか? 今回のXSCHOOLは、「未来の土着」をキーワードに、福井の潜在的なオリジナリティについて考える場にもなりそうです。

 

新たなヒントをもとに、XSCHOOLは10月末からいよいよ始まります。

参加するみなさんが、今後、福井を舞台にどのような問いを投げかけるのか。どうぞお楽しみに!

 

text:石原藍  photo:片岡杏子


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