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XSCHOOLがはじまる前のこと:株式会社廣部硬器編
2016年の夏、私たちはこれから始まる「XSCHOOL」に向けて、福井市内のとある3つの企業を訪れていました。業界も扱う商材もまったく異なりますが、それぞれ“革新を続ける伝統的なものづくり”を実践しています。「XSCHOOL」のプロローグとして、まずは3つの企業を訪れた時の様子をご紹介します。
XSCHOOLがはじまる前のこと:株式会社にしばた編
XSCHOOLがはじまる前のこと:株式会社番匠本店編
警察・消防紋章トップシェアを誇る「廣部硬器」
最後に訪れたのは、「株式会社廣部硬器」。紋章や家紋、といったシンボルマークを製作しており、警察・消防所の紋章では全国シェアナンバーワンを誇る会社です。
廣部硬器が製作する紋章はセラミックス製。木や樹脂、金属など他の素材に比べ、耐腐食性、耐寒性、塩害、凍害などの面で大変優れた特徴を持っています。
他の素材だと数年で交換が必要になるところ、独自に開発した純金焼成技術で、半永久的に美しさや形状を保つことが可能なのです。
北は北海道から南は沖縄まで、全国に納品している廣部硬器。消防紋章はなんと、関西型と関東型に分かれているんです。ご存知でしたか?
新潟県は関東型、富山県は関西型なのだそう。
廣部硬器のものづくりは時間と手間を要します。
まずは紋章の原型作りから。粘土で実際の紋章と同じものを作り、石膏型を作ります。
ミリ単位のわずかなカーブもカッターで整えていきます。
製品によっては大人の身長と同じくらいの大きな型を作ることも。
できた石膏型に水と粘土を混ぜたものを流し込む「鋳(い)込み」という作業を行います。しばらく乾燥させると、石膏型が水分を吸うため型から外れやすくなるそうです。
型から外す緊張の一瞬!
きれいに外れました!
鋳込みをした紋章を乾燥させた後は、表面を1mmほど研磨し、なめらかに整えていきます。
高さや幅を微妙に揃えるのは職人技。窯で焼くと粘土はその特性から少し縮むため、均一な紋章を作るためにはとても大事な作業です。
長年の勘で削る厚みを把握している工場長。
新人に教える時は、まずは見よう見まねで作業してもらうそうです。ここで失敗しても粘土だからまた作り直せばいい。しかし、きれいに仕上げたものでも、窯で焼くとどうしても割れや欠けが出てしまいます。磁器として焼きあがったものは再利用できないため、廃棄するしかありません。
敷地内には割れたものを廃棄する「磁器の墓場」が。
研磨した後は釉薬をかけ、1300℃の窯へ。
48時間かけて焼くと、表面がツルツルのガラス状になったきれいな紋章になりました。
その後、純金をかけて、再び800℃の窯で48時間焼き付け、ようやく完成です。
BtoBからBtoCへ。新しい商品の模索
今でこそ全国シェアナンバーワンを誇る廣部硬器ですが、もともとは官公庁の看板などを手掛けていました。しかし、公共工事の削減により、一時はピークの4割にまで売上が落ちたことも。
近年では社長の娘さんのアイデアにより、一般消費者向けの商品も開発するなど、セラミックスを活かした新商品にも力を入れています。
インテリアで使えるタイルや子供が塗り絵をして楽しめるセラミックスの恐竜など、デザイン性の高い商品が誕生しています。
「これからは1社だけではなく、いろんな分野がコラボする時代だと思っています。私たちが強みとする素材と手間をかける技術を活かし、新しいことを生み出していきたいですね」と社長の廣部耕一さん。
XSCHOOLでは、ここまでご紹介した3つの企業と一緒に、新たなもの・こと・仕事づくりを実践していきます。どうぞお楽しみに!
(text/石原藍 photo/片岡杏子、出地瑠衣)