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繊維をテーマにともに考えるXSTUDIOがスタート! 〜第1回ワークショップ・後編〜

9月23〜24日に行われたXSTUDIO第1回ワークショップ。前編では、福井の文化や風土、繊維業界のこれまでを紐解くさまざまなセッションの様子をご紹介しました。後編は各スタジオの動きに迫っていきます。

繊維業界の新たなスタンダードをつくるSTUDIO A

各スタジオではどのような活動が行われていたのでしょうか。ここからはその動きを追っていきます。

STUDIO Aでは、繊維が生まれる現場を知ろうと明林繊維の提携工場のひとつ、勝山市の小林機業場を見学させていただくことに。

▲STUDIO Aのメンバーは遊具のデザイナーやプランナー、企業の研究員、美大生など個性豊かなメンバーが揃っています。

小林機業場では、実際に織機が動く様子を見ながら、原料から糸づくりを経て生地ができるまでの工程について学びました。新しい生地を開発する過程で産元商社のさまざまな要望に応え、高品質を実現していく小林機業場の経験と技術に、明林繊維の村上貴宣社長も全幅の信頼を寄せているそうです。

▲はたや記念館「ゆめおーれ勝山」では、昔ながらの絹織物の工程と歴史について学びました。

 

翌日は明林繊維本社を訪問。アパレルメーカーのバイヤーやデザイナーが訪れた際、どのように商談を進めていくのかを体感しながら、生地サンプルを見せてもらいます。再生セルロース繊維というカテゴリーの中でも一つひとつまったく異なる、生地の風合いや手ざわりを確かめていきます。

膨大なサンプルを眺めていると、「商談のときは生地の風合いをどのように言語化するのか」という疑問が生まれてきました。「光沢感」「シャリ感」など、生地を表現する言葉はたくさんありますが、人によって感じ方は異なるはずです。

それぞれが感じた素朴な疑問や感想を共有。明林繊維のみなさんに質問をぶつけながら、アイデアの可能性を探っていきます。

今回のワークショップでたどり着いた一つのテーマが「生地のサンプルに表示されているタグの項目を見直すこと」。繊維業界に携わるプロのみならず、そうでない人にも新しい可能性を開いていくような、生地を選ぶ際の「指標」やコミュニケーションのあり方について、リサーチを進めていくようです。

▲再生セルロース繊維が誕生するまでのストーリーにも着目していきます。

転写技術を体験し、新たな可能性を発掘するSTUDIO B

STUDIO Bはパートナー企業、ジャパンポリマーク社を訪問。まずは、何層にも素材が組み合わさった熱転写ラベルの製造工程を見学しました。驚くほど多様な素材に圧着する技術があるのですね!

▲繊維業界に携わる参加者が多いSTUDIO B。アパレル企業に勤める人や、デザインを学ぶ学生のメンバーも。

 

また、ジャパンポリマーク社の機械を使った熱圧着体験も行いました。各自で持ち寄ったTシャツに、さまざまな機能を持つラベルを熱圧着していきます。

ラベルにも水を弾くものや、光をあてるとその方向に光が反射する「再帰性反射」の機能を持つものなど、ジャパンポリマーク社ではさまざまな種類の素材を開発しています。

▲なんと、この日のためにXSTUDIOオリジナルのラベルを作成!

 

Tシャツの好きな場所にラベルをのせて、熱転写機でプレスすると……


じゃーん! あっという間にオリジナルTシャツの完成です!


Tシャツだけではなく、帽子や靴下、そしてバッグにも。ラベルを貼ると、それだけで一気に特別感が出てきます。

 

翌日は工場の見学や熱転写体験を通して感じたこと、気づいたことをふせんに張り出していきました。

「教育と組み合わせられないか」「再帰性反射はまちの景観をつくるのに役立ちそう」「香りを出すものや消臭など、ラベルに機能を追加してみても面白いかも」

一つずつアイデアのタネを書き出していくと模造紙がいっぱいになり、窓に張り出すことに。

次のワークショップに向けて、メンバーたちが出した可能性に対してリサーチを進めていきます。

まずは手を動かす。実験の連続から「よさ」を見出すSTUDIO C

STUDIO Cはパートナー企業の荒川レース工業で、レースの製造工程を知るところからスタート。

▲建築家やデザイナー 化学が専門の研究者など、活動のフィールドもさまざまです。

 

荒川純治社長にもご登場いただき、レースの構造やこれまで自社で取り組んできた製品についてご紹介いただきました。なかでもメンバー全員の印象に残ったのが、社長の「レースは空気を編んでいるんや」という言葉。レースが持つやわらかさや風を通すゆるやかさが、すべてこの言葉に集約されているようでした。

▲レースの魅力を語ってくれた荒川社長


工場では荒川レース工業の荒川拓磨・道子さんの案内のもと、糸からレースになるまでの様子を見学。その複雑な構造を理解するのになかなか苦戦しました。目に見えないほどのスピードで編み上げられていくレース生地の美しさは圧巻の一言です。

▲メンバーたちの質問に丁寧に答える荒川拓磨さん(左)

 

▲レースの模様を半田ゴテで切り取る様子に釘づけになるメンバーたち

 

▲無数の糸が美しい模様になっていく様子を写真や動画に収めていきます。

 

見学後はレースを重ね合わせてみたり、切り出して模様をつくってみたりと、自由に実験を進めます。まずは手を動かしかたちにしてみることで、頭のなかでは想像もしなかった気づきが生まれてきます。

STUDIO Cで考えようとしているテーマが「よさ」について。「よさ」といっても、その感じ方は一人ひとり異なります。今回のワークショップでは、それぞれが自分のお気に入りのプロダクトを持ち寄り、「どんなところによさを感じているのか」を共有しました。

▲膨大なレース生地のなかから「いいな」と思った生地を2つずつセレクトし、各自がどんな基準で選んだのかも共有しました。

 

メンバーが何に良さを感じるのかを知ることで、今後アイデアをかたちにしていくときのコミュニケーションにも大きく役立ちそうです。

次のワークショップまで「手を動かすこと」をベースに、各自がレースを用いた試作を行っていくSTUDIO C。頭で考え、手を動かし、それによって考えられる可能性を考察しながら、オンライン上でのコミュニケーションを進めていきます。

 

いよいよ動き出したXSTUDIO。物事を俯瞰して見たり、一部分にこだわって突き詰めたりと、ものすごい勢いでアップデートが進む各スタジオの様子に目が離せません。「XSTUDIO note 2018」では、3スタジオそれぞれのメンバーがワークショップの様子を更新! こちらも定期的に更新していきますので、ぜひご覧ください。

 

text:石原藍 photo:片岡杏子 


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