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発表会まであと少し! それぞれがつくりたい繊維の未来とは? 〜最終ワークショップ〜
2018年9月から始まったXSTUDIOも早いもので、12月の最終ワークショップを迎えました。3つのスタジオは「繊維」というフィールドで、それぞれまったく異なる方向を見据え、リサーチやプロトタイプづくりを進めています。前回のワークショップから約1か月。各スタジオではどんな動きがあったのでしょうか。そして発表会に向けて、どのようなかたちをつくっていくのでしょうか。
繊維も福井も飛び出して、リサーチを重ねたSTUDIO A
「多くの人と繊維業界をつなげるプラットフォームづくり」を進めているSTUDIO Aは、福井を飛び出し、さまざまな場所を訪れリサーチを進めていました。
その一つが、染色を基盤に多彩な事業領域をカバーする小松マテーレ株式会社(石川県小松市)。染色・後加工を施すことで従来の繊維にはない機能を開発し、独自のテキスタイルを提案する先端ファブリックメーカーとしての地位を築いています。旧本社棟を、同社開発の炭素繊維『CABKOMAストランドロッド』で耐震補強したファブリック・ラボラトリー「fa-bo(ファーボ・写真)」も話題に。
XSTUDIO第4回ワークショップの前日に北陸入りし、同社を訪れたSTUDIO Aメンバー有志は、この施設を見学させていただきました。
「小松マテーレさんの工場を見学させていただき、織りや成形だけでなく、染色や後加工も繊維にとって大きな変化をもたらすことを実地で理解しました。また、自社でつくった製品を都内で販売する計画もあるなど、BtoBだけではなく、一般消費者を含めた幅広いユーザーとつながろうする姿勢に、繊維業界の新しい動きを感じましたね」
とリーダーの杉本雅明さん。
また、前回のワークショップで「ワインと繊維の共通点」を見出したことから、富山県のワイナリーも訪れました。
「ワインと繊維に共通点などあるのだろうか、と最初は懐疑的だったのですが、ワイナリーで生産者に話を伺ったところ、われわれ繊維業界と同じ悩みを持ち、ブランディングや素材に対する考え方にも共通点があることに驚きました」
と、パートナー企業・明林繊維株式会社の村上貴宣さんにも、大きな発見があったようです。
味や香りを形成するぶどうの品種や醸造方法の違いといった「設計」を楽しむことができ、生産者のもとを訪れることもできるワインの世界。そんな体験を繊維や生地の世界でも実現できれば……。発表会に向けてコンセプトが見えてきたSTUDIO Aでは、引き続きそのコミュニケーションをデザインしていきます。
新メンバー加入!? スタジオ内で生まれる5つのプロジェクト
STUDIO Bでは……あれ? 見覚えのある人たちがスタジオメンバーに加わっていました。
STUDIO Bでは、数多く生まれた閃きや関心を絞り込んだ、5つのプロジェクトが進行中。福井でつくった繊維を使い、福井のまちの景観に取り入れる試みや、夜道を歩く時も安心できるプロダクト、外のデザイナーと福井の企業が組んで新しいことを始める仕組みづくりまで、いずれもジャパンポリマーク社の「くっつける」技術を組み合わせた多様なアイデアが生まれています。XSCHOOL1期生であるデザイナーの2人が協力メンバーとして加わったことで、さらにアイデアをかたちにするスピードが上がってきました。
「ジャパンポリマーク社の“くっつける”技術は、本来あまり目立たないけど、なくてはならないもの。接着技術を素材だけでなく人とのつながりまで発展させるのはすごい」と、ほかのスタジオメンバーも興味津々の様子。
最終ワークショップでは、各プロジェクトの動きがさらに加速していきそうです。
レースの役割や表現の幅が広がってきたSTUDIO C
レースの柄と柄の間にある「地組織」に着目したSTUDIO Cでは、前回のワークショップの後も地道な実験を続けていました。
その一つがレースを編む糸の張り方に変化をつけるというもの。微妙な糸の張り/緩みによって、レースの伸びや風合いはまったく変わるそう。パートナー企業、荒川レース工業の荒川拓磨さんとともに、ひたすら試作を繰り返し、さまざまな種類の伸びるレースをつくりました。
さらにレースをランプシェードとして使うことで光の透かし方を楽しんだり、さまざまな種類の樹脂で固めることでレースが持っている空気感を閉じ込めてみたり……形状保持の機能を持つプラスチック素材を、レースと同じ編み方で、なんと9時間編み続けたメンバ―も。
メンバーたちが探求を続けるなかで見出したレースの「よさ」は、発表会でどのように表現されるのでしょうか。
各スタジオの動きもラストスパート
12月10日・11日に開催した最終ワークショップでは、各スタジオの作業も大詰めを迎え、パートナー企業を拠点に発表の準備を進めていました。
STUDIO Aは明林繊維の方へのヒアリングを重ねるメンバーや、倉庫でひたすら布を集めたり切ったりするメンバーなど、いくつかのグループに分かれて活動。さまざまな入口から、多くの人と繊維をつなげる仕掛けが誕生するようです。
STUDIO Bは部活のような和気あいあいとした雰囲気のなか、5つのプロジェクトについて全員で意見を出し合っていました。つくったプロダクトが具体的にまちのなかで使われているシーンを想像しながら、アイデアの精度を高めていきます。
STUDIO Cのパートナー企業・荒川レース工業を訪れると、メンバーたちががこれまで生み出してきた数々の実験の成果がフロア一面に並べられていました。すごい数! ここからレースの「よさ」がより伝わるものをピックアップし、発表会の展示計画を立てていくようです。
ワークショップの終盤では、プログラムディレクター多田智美さんによるセッションが行われました。
「私たちのプロジェクトを簡潔な言葉で表すと?」「このプロジェクトでいいなと思っている点は」「このプロジェクトを通して生み出したい未来とは?」など、6つの問いに対して、一人ひとりが答えを書き、自分たちが進めているプロジェクトの整理を行っていきます。
書き終えた後は、チーム内で共有。自らのプロジェクトを言語化し、いろんな切り口で紹介することによって新たな気づきが生まれました。
発表会前の最終プレゼンテーション
2日間のワークショップを経て、最後のプレゼンテーションの時間がやってきました。スタジオメンバーだけでなく、XSTUDIOに興味を持ってくださった方も多数来場いただき、会場は熱気に満ちています。発表会に向け、3つのスタジオからそれぞれのプロジェクトについて紹介されました。
テキスタイルの未来を考えるための招待状
STUDIO Aはプロジェクト名が決定。ZINEやサンプル帳といったコミュニケーションツールの作成や、テキスタイルが生み出される工程や風景の紹介など、繊維の世界への誘いから、テキスタイルとの出会い、そして産地との関係性の構築までをデザインしています。
さらに、コミュニケーションの鍵となる場所が、明林繊維の倉庫。STUDIO Aのメンバーたちが、繊維の世界に心奪われた場所です。明林繊維がこれまでつくりだした数々の布が眠っている場所を “テキスタイルの聖地” として開いていこうと、さまざまな仕掛けを考えています。一体どのような存在になるのか、続きは発表会で!
XSTUDIOを通して新たな福井らしさをつくる
STUDIO Bではこの2日間を経て、5つのプロジェクトがさらに研ぎ澄まされていきました。
「ダブルラッセル」という福井で生産された生地を使ったプロダクトでまちの景観をつくるプロジェクトや、国内外のクリエイターと福井の企業とのコラボレーションを生み出す「アーティストインレジデンス」プロジェクト、福井の伝統工芸の一つ「越前和紙」とジャパンポリマーク社の圧着技術をスワップ(交換)するプロジェクト、福祉からアイデアを得て貼ってはがせる安全性の高いクッションをつくるプロジェクトなど、一つひとつに福井らしさが感じられるものばかり。
発表会も楽しいプレゼンテーションになりそうです!
実験を繰り返したことで見えてきたレースの可能性
STUDIO A・Bに比べ、独特な進め方をしていたSTUDIO Cでは、とにかく「手を動かす」ことにこだわり、各自がレースを使った実験を進めていました。
「レースを観察していくと、それぞれがレースを切り刻み始めたり、レースから派生して違う素材と絡めたりと、実験がどんどん広がっていきました。しかし、脱線したことで逆にレースの幅広い『よさ』を引き出すことにつながっていったと思います」とリーダーの吉行良平さん。
実験に加え、製品化を意識しているものもあります。それがレースを使った台所用プロダクト。
荒川レース工業で働く職人が、普段、レースの切れ端を食器洗い用のクロスとして使っていたことにヒントを得ました。
実際に使ってみたところ、泡立ちや汚れ落ちが従来のスポンジ以上の効果を持つ生地もあったそう。何十枚もの生地を使い、一枚ずつ泡立ち方を比較したプロセスも発表されました。
また、荒川レース工業を中心とした実験拠点の構想も始動!
レースの良さを体験する場として、またレースから新しい何かを生み出すコミュニケーションの場として動き出していくようです。こちらも楽しみです!
3つのスタジオの発表が終わり、プログラムディレクターの原田祐馬さんからこんなアドバイスがメンバーに伝えられました。
原田さん「みなさんの発表を聞いていて、パートナー企業にとって、いまやスタジオメンバーの存在が“もうひとつのエンジン”になっているように感じました。また、パートナー企業に伴走しつつも、それぞれが自分ごとと関わっている。だから、思いっきり楽しみながら取り組んでいる様子が伝わってきます。まずは発表会に向けて、一人ひとりがとことん『質とはなにか?』に向き合い、発表をつくりあげてほしい。みなさん、もうマウンドには立っている状態です。あとは、三振を恐れず、バットを振るだけ。頑張りましょう!」
最後は「頑張るぞ! おー!」の掛け声で全4回のワークショップが幕を閉じました。ここから発表会までの1か月半の期間、各スタジオはスピードを上げて、プロジェクトのアップデートを進めていきます。
東京・福井の発表会までわずか! スタジオメンバーたちの勇姿を当日会場でぜひご覧ください!
text:石原藍 photo:片岡杏子
【東京/福井 イベント概要】
【XSTUDIOプレゼンテーション / 東京】
福井の“繊維”と3つのスタジオからはじまる実践
⽇時:2019年1⽉27⽇(⽇)13:00〜18:30(12:30開場)
13:00 オープニング、XSTUDIOのご紹介
3つのスタジオのダイジェスト・プレゼンテーション
14:45 3つのスタジオのパラレルセッション(分科会)
16:10 ゲストのレビューとラウンドテーブル・セッション
17:30 風土を味わうレセプションパーティ
18:30 終了
*展示は全時間帯でご覧いただけます
*時間帯は変更になる可能性があります
会場:東京ミッドタウン日比谷 6F・BASE Q(東京都千代田区有楽町1丁目1−2)
参加費:一般1500円、学生無料(*風土を味わうレセプションパーティつき)
要事前申込:https://xstudio2018tokyopresentation.peatix.com/
登壇者:30人のXSTUDIOメンバー
ゲストレビュアー:
伊藤亜紗氏(東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院准教授)
白水高広氏(株式会社うなぎの寝床 代表取締役)
若林恵氏(編集者/黒鳥社 blkswn publishers)
Facebookイベントページ(東京)
https://www.facebook.com/events/789764991364569/
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【XSTUDIOプレゼンテーション / 福井】
福井の“繊維”と3つのスタジオからはじまる実践
⽇時:2019年2⽉9⽇(土)12:30〜18:30(12:00開場)
12:30 オープニング、XSTUDIOのご紹介
13:10 STUDIO A プレゼンテーション
(休憩 15分)
14:00 STUDIO B プレゼンテーション
14:35 STUDIO C プレゼンテーション
(展示見学・休憩 40分)
15:45 ラウンドテーブル・セッション
16:45 パートナー企業コメント
17:10 展示見学・レセプションパーティ
18:15 終了
*展示は全時間帯でご覧いただけます
*時間帯は変更になる可能性があります
会場:NICCAイノベーションセンター(福井県福井市文京4-23-1)
参加費:無料(*レセプションパーティつき)
事前登録をお願いします:https://xstudio2018fukuipresentation.peatix.com/
登壇者:30人のXSTUDIOメンバー
ゲストレビュアー:
伊藤ガビン氏(編集者)
田子學氏(デザイナー/MTDO Inc.代表取締役)
Facebookイベントページ(福井)
https://www.facebook.com/events/525011151336362/