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FUTURE

小さな地域メディアとしての個人が、都市の未来を変えてゆく

このプロジェクトがはじまる少し前、2016年夏のこと。
僕ははじめて福井を訪れた。福井はおろか、北陸を訪れるのもこれがはじめてだった。

このとき、FUKUI INSPIRATIONAL TOURと題して、
現在プロジェクトに関わっている、地域内外のデザイナー、編集者の方々と、
福井のさまざまな場所をいっしょにめぐり、たくさんの方々と出会い、お話を伺った。


一乗谷朝倉氏遺跡では、保存協会の名物会長、岸田清さんのお話から
ありありと浮かび上がる、かつてそこにあった人々の暮らしに目を向け、

 

照恩寺では、現代の光(=プロジェクタ投影・舞台照明)で装飾した寺の内陣と、
テクノのリズムを乗せられたお経で、極楽浄土を表象する「テクノ法要」に面をくらい、

 

株式会社廣部硬器では、人々の安心と安全を影で支えるものづくりの温かみに触れ、

 

福井市立郷土歴史博物館では、学芸員の藤川明宏さんの解説のもと、
福井の歴史と現在までの連関に思いを馳せ、

 

オーナーの森岡咲子さん、自らでリノベーションしたゲストハウス Sammie’sで、
ツアーで見つけてきたこと、そしてこれからの地域の可能性について語り合った。

ほんの数日の短い滞在ながらも、ここには書ききれないほどたくさんの場所と人に出会った。


このウェブサイトをお読みいただいている方々ならおわかりのように、
その後さまざまな形で、このプロジェクトに関わっていただいた方々ばかりだ。


振り返ってみても、このツアーがプロジェクトにとってどれほど重要だったか計り知れない。

 

そして、このツアーのガイドを引き受けてくださったのが、
福井新聞社まちづくり企画班のお二人、高島健さんと細川善弘さんだった。

このまちづくり企画班は、コワーキングスペース「sankaku」を
自分たちの手でつくり、運営することでスペースのハブとなりながら、
福井各地をめぐり、その地域ならではの食や風土を発見し、
体感するイベント「ふくいフードキャラバン」を地域の人たちとともに推進するなど、
記者の枠組みを超えて、活動するチームだ。


ツアーの夜、このまちづくり班がはじまるきっかけとなるお話を聞いた。
それは、ある市民団体代表の一言だった。


―「評論家はもういらない」


その場は「確かにそうですね」と人ごとのように応じた彼らも、
あとになって「あの言葉は、記者自身にも向けられていたんじゃないのか」
「記者だって住民の一人ではないか」と気づいたという。


以来、「まちは自分たちでつくるもの」のメッセージのもと、
一貫して実験と実践を続ける、まちづくり班の変遷はぜひ彼らの記事で見てほしい。


翻って、この二人の転換を改めて言い換えてみるなら、
これは福井新聞の一記者から、
「地域のメディアそのもの」への転換といえるのではないだろうか?
これはとてもシンプルで、そして決定的な転換だと僕は思う。


「取材をして、記事を書く」―これはもちろん記者の仕事であり、本分だ。
しかし、もしその本分を、自らが地域のメディア(=「媒介」)となることだ
と捉えてみたら?

コワーキングスペースを運営し、地域の内外の人と人を媒介していく、
一見すると記者のやることとは思えない、この仕事もまた、その本分といえるはずだ。


このまちづくり班の企画に、ゴーサインを出した上司の挙げた条件がまた素晴らしい。

「ただし、ちゃんと楽しんでやるように。記者が楽しんでなければ、
誰もまちづくりをしようなんて思わないから。」

そう、これは新聞記者の二人にとどまる話ではない。
市民、そして地域に関わるあらゆる人たちが、その地域のメディアなのだ。

 

ある人は東京で、大阪で働きながらも、ときに故郷のことを思い、語るであろうし、
ある人は偶然見つけた、地域のおもしろいところをSNSで発信するだろうし、
ある人は自分のもつ場所で、たくさんの人と場所を紹介するだろう。


その人自身が自らの関心と好奇心にもとづいて、地域のメディアとなっていく。


そのように考えてみると、僕自身も、このプロジェクトに関わったあらゆる人たちも、

みんな地域の内と外をつなぐ、小さな小さなメディアだ。
地域を超えた関係性を生み出すことを目指してはじまった、このプロジェクト。
そこから生まれたもののひとつは、たくさんの小さな地域メディアの群れだといってもいいだろう。


make.fUKUI WONDERSトップページの
#make_fukui」を改めて見ていただきたい。
たくさんの人たちがそれぞれの視点で、それぞれの好奇心に突き動かされながら、
見つけ出した福井が見えてくるはずだ。


もしも市民が、その地域に関わるあらゆる人たちが、
地域の内と外をつなぐメディアになれたら?

そうしたたくさんの個人の小さな点が、線になり、
やがては面へと広がっていったら?

地域に関わるあらゆる人々というメディアが、
互いに接続し、共鳴し、絶えず外との循環を生み出していくことができたなら、
これからの都市はきっと、躍動する流動体のようにその姿を変えてゆくはずだ。


未来につなぐ ふくい魅える化プロジェクト 
Re:public, Inc. 白井瞭

(Photo: 出地瑠以、片岡杏子)

 


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