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夏の日本海トライアルステイ

夏の日本海トライアルステイ第一弾!福井の農家さんをめぐる3日間<後編>

前編でご紹介した越前水仙農家の山本正男さんに続き、後編では「越前金時」の生みの親、濱内慶次さんを伺った時のレポートをしていきます!


【2】 越前金時農家 濱内慶次さん


そもそも、「越前金時」とは?

 福井の銘菓でも使用されることが多い「越前金時」。地元の方ならご存知の方は多いと思いますが、「越前金時」とは、福井市の特産品であるサツマイモのことです!

(私は、完全に「金時豆」を想像していました…。)

 野菜や果物には、それぞれに“品種”が存在しますね。例えば、いちごだと「とちおとめ」「あまおう」「紅ほっぺ」などの品種がありますが、甘さや酸っぱさや大きさ、特徴的な形などの違いのほかに、その種がどんな土地、どんな気候で育ちやすいかという点もそれぞれに大きく違ってきます。それが商標登録されると“ブランド”となります。(※品種名とブランド名が一致しない場合もあったりします。)

 サツマイモだと、「紅はるか」「紅あずま」「安納芋」などの品種を耳にすることが多いと思うのですが、「越前金時」はふくい「一押しの逸品」にも選ばれている福井市の特産品です。

 

さっそく、「越前金時」の収穫を見学!



 今回の「福井の農家さん巡り」ナビゲーターである前田さんに案内され、越前金時を生産しているという噂の濱内さんのもとへ。ん......本当にここで場所は合ってる......?と多少不安になりながらも、事務所の扉を開きます。

 そう、「越前金時」の生みの親である濱内さんは、自動車整備会社「東洋自動車」を営んでるのです。

 なんと、自動車整備と農業との兼業!

 ということは、現場には出ずに指示を出している経営者ということなのか…と思っていたのですが、ご自身で毎朝畑に出て作業をしていると言うので、生活リズムがいったいどうなっているのか心配になってきました。

 疑問は膨らむばかりなので、越前金時を栽培する畑を案内して頂きながら、ひとつひとつ濱内さんの素性を解き明かしていきます......



 実は、「越前金時」という品種・ブランドが生まれたのは17年前。思ったより最近の話! 濱内さんと仲間8人で、“福井市の特産品を作ろう”と動き出したのが始まり。

 前編でも触れましたが、福井県は日本海側でとても寒いイメージがある一方、対馬暖流の影響で、育ちやすい農作物が千葉の安房郡や兵庫の淡路島といった温暖地域と似通っています。福井市はもともとサツマイモづくりに向いている土地なので、濱内さんも幼い頃から実家でサツマイモは作っていたそうです。

 そんな土地の特徴を活かしてサツマイモを作ろうという会議の中で目をつけたのが、“雨が少なく、温暖で、海の成分を含んだ砂地”で栽培される「鳴門金時」。徳島県から「鳴門金時」の苗を取り寄せて、福井市白方の砂丘地帯に合わせて品種改良をして「越前金時」という品種を作り、ブランド化をしたというルーツがありました。


 農地に入ってみると…本当に砂だ!

 砂地で水はけが良いので、毎日スプリンクラーで水をやる必要があるそうで、その調整がまた難しい。水が足りないとサツマイモの形が丸くなるし、水が多いと長くなる。毎年、土に入れる肥料の調整をしたり、水の量も細かに観察しながら調整しているというので、毎朝畑に来て様子を見たくなる気持ちもわかりますね…。それを17年......すごい......


 「獲ってみるか?」というなり、スピーディーに畑に入っていく濱内さん。鎌でツタをかき分け始めた!


 ブチッ!と豪快に、でも優しく見えるのが不思議。


 そして、越前金時が成っているであろう畝にかかっている黒いビニール“マルチ”に切り込みを入れ、ガバッと剥がしていきます。


 あっ、見えてきた。


 そしてモグラのように砂を掘っていきます!


 出てきた! 砂地で育つと、皮がボコボコしないんですって。ほんとに、表面がツルツルだ〜。そして、色が鮮やかで美しい。越前金時は、焼き芋にして食べた時にほろほろとしているのが特徴で、昔ながらの屋台で買ったサツマイモを思い出します。


 私は小学生の時に芋掘りを経験していないので、こういうふうになっているのは知りませんでした......


 同じ場所で育てていても、周囲の環境とか条件で形がこんなに違ってくるなんて、同じ形・大きさで育てるのって難しいんだなぁと実感。


 傷をつけないように収穫した後は、温度と湿度を調整した部屋の中で一週間置いておく「キュアリング」という工程があり、そうすることで芋の皮がコルク質になって身が腐りにくくなります。膜を固くし、甘みを凝縮するイメージ。その後は、保温庫で寝かせ、3月まで品質を保ちながら出荷をしていきます。


 収穫した越前金時は、お土産にいくつか頂きました!本当にほろほろして美味しかった......。そして次に福井に行った時には、越前金時が使用されているお菓子も食べてみたいです。

 濱内さん、実は越前金時だけでなく、らっきょう・すいか・桃・サトイモなどの栽培もしています。機械いじりも完璧な上に、自然とも対話が出来るとは、並大抵でない才能を感じます。更には、町内の行事などにも積極的に関わっている町の人気者おじさんだそう......本当にパワフル。1日密着取材したら、面白い生活が体験出来そうな予感です。またひとつ、福井に来たい理由が増えてしまいました!


おまけの福井グルメ情報

 福井駅に戻ってひと休みということで、おすすめのお食事処を紹介していただいたのですが、これが本当に本当に美味しかったので紹介させて頂きます!

 福井駅から徒歩5分ほどの場所にある「むろまち」(http://www.misokatsuya.com/index.html)。ここのみそかつ定食が絶品。東京に帰ってきて、何度も思い出してしまう味でした。

 主張控えめなんですが、どことなく上品な、昔ながらの店構え。


 そして見てください、コレ。

 みそかつ定食の味噌ソースに、山椒が贅沢に振りかけられています!! もちろんソースは最高級に美味しいのですが、かつの揚げ具合も絶妙。けっこうボリューミーなのですが、あっという間に食べてしまいました。(あああ、食べたい。)

 福井の方で、まだ行ったことがないという方がいるのならば、こちらは絶対行っておくべきお店だと思います。県外の人におすすめしてあげたら、100%福井大好きになりますので。



 そしてもう一件!

 旅の最後に訪れた、「手打ちそば やっこ」。越前そばが食べたい!ということで、前田さんイチオシのお店を案内して頂きました。


 シンプルな越前おろしそばを注文しました! 麺にコシがあって、蕎麦の味もしっかりしていてとても美味しかったです。


 前田さん、本当に素敵なナビゲートをして下さいました。きっと、長い運転でエネルギーを使っていたのでしょう。豪快な天ぷらおろし蕎麦をもりもり召し上がっておられました......! 本当にありがとうございます。


トライアルステイの振り返り

 記事の中でご紹介したのは2件の農家さんでしたが、3日間で見ることの出来た福井の景色は盛りだくさん。地元の方に地域のことを教えて頂く楽しさは、観光地巡りとは全く違うものでした。食や農業という分野で活動していく上で役立つ知識を見聞きできたのはもちろん、福井の土地柄や、それに対応する人々の暮らし、町並み、人柄など色んな角度から考えることが出来た素敵な旅だったなぁと改めて思います。


 そして、自分の住む土地のことももっと知りたいなと、新しく課題も出来た3日間となりました! 普段の生活を客観的に考えるきっかけにもなったので、そういう意味でも良かったなと思います。

 トライアルステイに参加させて頂き、本当にありがとうございました!

 福井で出会った方々とお仕事が出来るよう、東京でも頑張ります!


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