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しごと道
福井ではたらく人たちの「はたらき方」に焦点を当て、それぞれが大事にしていること、今考えていることを語っていただきます。第8回は一乗谷朝倉氏遺跡の保存協会会長を10年にわたり務めている岸田清さんが登場します。

岸田清さん/一般社団法人 朝倉氏遺跡保存協会

朝倉氏遺跡保存協会 会長
岸田清

戦国時代、103年間にわたって越前の国を支配した戦国大名朝倉氏。その城下町は1573年に織田信長軍の焼き討ちによっておよそ3日で廃墟と化し、地中深くに埋もれてたままとなっていました。約400年の年月が経ち、当時の町並がほぼ完全な姿で発掘された一乗谷朝倉氏遺跡は「日本のポンペイ」とも言われ、今では全国から多くの観光客が訪れています。今回は一乗谷朝倉氏遺跡の観光PRを手がけている会長の岸田清さんに、一乗谷朝倉氏遺跡への想いと福井のまちの可能性について話をうかがいました。

 

岸田さんが一乗谷朝倉氏遺跡に関わるようになったいきさつを教えてください。

私は今年で70歳になりますが、生まれてからずっと、ここ朝倉の地で育ちました。地中に埋もれていた朝倉氏遺跡の発掘が始まったのは昭和421967)年。それ以来、自分たちが住むこの土地にこんな素晴らしいものが残されていたのかと遺跡に興味を持ち、昭和491974)年、保存協会に入会しました。当時、私は京福バスに勤めていたのですが、保存協会の仕事に専念しようと、定年を待たず57歳にて退職させていただきました。

 

ところが退職してちょうど1週間後の平成16(2004)718日、あの甚大な被害を受けた福井豪雨が起こったのです。遺跡付近もひどい状況で、保存協会も災害復興のボランティア対応をすることになりました。会社に勤めながらでは難しかったと思いますが、運良くこちらの仕事に専念できたので、45年はかかると思われた復興作業も、全国からの多くのボランティアの方々によって1年で終えることができました。このタイミングで退職したのは、今でも朝倉氏の思し召しだったと思っています。

 

岸田さんが朝倉氏遺跡を案内するときに心がけていることは何ですか?

案内を始めて10年くらい経ちますが、もともと歴史に詳しいわけではありませんでした。でも、なぜかみなさんをご案内していると淀みなく話すことができる(笑)。自分でも不思議ですが、これは朝倉氏が後ろに立って私に喋らせているのではないかといつも思っています。案内する時に心がけているのは、一般の方々には当然ですが、どんなに偉い人や学歴の高い人が相手でも、わかりやすい言葉を使って自然体で話すこと。堅い話ばかりしたってつまらんもんで、ニコニコと笑顔でいることを大切にしています。

 

実は今から9年前、私の初孫が一乗谷の幼稚園に入園する際に、同級生がたった3人と知りました。そんな少人数で幼稚園・小学校と7年間学び、この先中学校・高校と進学した時に怯えて弱々しい生徒になってしまうんじゃないかと不安になったのです。そこで、自分たちの住んでいるところはこんなに素晴らしいところなんだ! と人前で堂々と語れるような人づくりをしようと、一乗谷地区の小学校5年生と6年生が遺跡のガイドをする取り組みを検討し始めました。するとどうでしょう、資料を集めたりメモをとったりと、みんな本当に真剣なんです。そして、自分たちが調べたことをみなさんに伝えたくて仕方がない(笑)。

 

この取り組みを始めて9回目になりますが、みんな見違えるほど堂々と話せるようになっています。小さい頃から自分たちの住んでいる場所に誇りを持つと、将来県外に出たとしてもまた故郷に思いを馳せるようになるのではないか。私はそう思っています。

 

▲岸田会長のお気に入りの場所は、高台から見渡せる朝倉義景館跡の全景

▲遺跡内にある特別名勝「湯殿跡庭園」。ここを訪れた芸術家の故岡本太郎さんは「このような素晴らしい戦国時代の庭園が残っていましたか!」といたく感動し、ステテコ姿で駆け回ったそう

 

長年暮らしている福井のまちについて、岸田さんが今感じていることを教えてください。

福井は今いい方向に向かっていると思いますよ。来年は福井で国体があり、新幹線の開通も数年後に控えていますが、私はそれ以上に岐阜県・長野県から福井県が結ばれる中部縦貫道の開通が大きな効果をもたらすと思っています。今は流通もよくなって、蕎麦やカニなどは全国どこでも食べられる。そういうもので福井を売り込む時代は終わったと思います。福井市だけでなく他の市町と連携しながら、この地でしか見られないもの、この地でしか食べられないもの、この地でしか感じられないものにもっと目を向けることによって、福井の良さがより多くの人に伝わるのではないかと思います。

 

最後に、岸田さんが思い描く夢はなんでしょうか?

今、特別史跡、特別名勝、重要文化財と国の3重指定を受けているのは京都の金閣寺、銀閣寺、醍醐寺三宝院、広島の厳島神社、奈良の平城京、そして一乗谷朝倉氏遺跡です。しかし、このなかで世界文化遺産に登録されていないのは朝倉氏遺跡だけなのです。未だ埋もれている山城の発掘整備を行い、私としては一日も早く世界文化遺産の登録を実現させたいですね。

 

しかし、この場所は特別史跡のなかに集落がある特殊な地区なので、昭和46(1971)年の特別史跡指定以来、地元の人たちは厳しい規制のなかで不便な思いをしながら暮らしていることも事実です。世界文化遺産になると、さらに地元の人たちにしわ寄せが来ることが予想されます。一筋縄ではいかない問題ですが、これからも地元の人たちと対話を重ねながら、文化財としての朝倉氏遺跡の価値を守り育てていきたいと考えています。

 

(text:石原藍 photo:片岡杏子)

 

一般社団法人 朝倉氏遺跡保存協会
〒910-2153 福井市城戸ノ内町28-37
TEL 0776-41-2330
WEB http://www3.fctv.ne.jp/~asakura/index.html

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