福井駅から三国、勝山、永平寺へと続く福井のローカル線「えちぜん鉄道」（通称：えち鉄）。その車内では「アテンダント」と呼ばれる女性の乗務員が、切符の販売や観光案内などを行っています。今回は、乗客一人ひとりに細やかな接客を行うアテンダントの内藤美佳さんに、仕事の醍醐味をうかがいました。

今の仕事の内容と、この仕事に就こうと思ったきっかけを教えてください。

えちぜん鉄道の「アテンダント」として、車内での切符販売や観光案内などお客様への接客業務を行っています。学生の頃、えち鉄に乗るといつもアテンダントの姿を見ていました。見ず知らずの乗客に笑顔で話しかけ、どんな質問にもすぐに答える様子に憧れていて、将来あんな風に人とコミュニケーションができる仕事に就きたいと思っていたんです。その後も観光やアナウンスの分野に携わりたいという思いは変わらず、就職先を探していたところえちぜん鉄道とのご縁があり、まさに思い描いていた職業に就くことができました。

アテンダントさんはどのように仕事を覚えていくのでしょうか？

まずは先輩と一緒に電車に乗り、発券業務や路線ごとの細かな知識を身につけていきます。駅までの所要時間や乗り換え案内はもちろん、近くの観光名所や病院の場所、タクシーでいくらかかるか、季節ごとに咲く花の名前や山の名前など、覚えることはさまざまです。私は福井市出身なのですが、勝山や三国のことは最初ほとんどわからず、お客様に教えていただくことも多かったですね。業務以外でも休みの日には観光地巡りをしたり、資料を集めて自分でノートをまとめたり……例えば永平寺という項目を作り、バスの接続、参拝の所要時間などを書き込んでいました。入社2〜3年でようやくお客様からの質問に対してスムーズに答えられるようになりましたが、この前は福井の家の構造を聞かれて戸惑いましたね（笑）。入社して6年経った今も、まだまだ勉強中です。

アテンダントさんが持っているカバンには何が入っているんですか？

タブレット、運賃表、補充券、おつり用のお金、メモ帳、筆記用具などです。タブレットには地図や時刻表、アナウンス内容、乗り換え案内、接続時間やトイレの有無、タクシー情報などが入っていて、海外のお客様と接する時のために翻訳機能もついています。タブレットになる前は分厚い時刻表や地図などを持ち込んでいたので、小さめのスーツケースに入れて乗車するアテンダントも多かったですね。補充券は車内で切符を購入したお客様にお渡しする券なのですが、旅行の記念に持って帰られる方もいらっしゃいます。駅近隣の場所を聞かれることも多く、簡単な地図を書いたりタクシーの電話番号や料金の目安を書いたりするため、メモ帳も必須です。

仕事のなかで大切にしていることを教えてください。

お客さまの乗車時間は長い区間で約1時間、一番短い区間で3分程度。たとえ短い乗車時間でもお客様にどうやって満足していただけるかを常に考えています。現在アテンダントは10名いますが、先輩によってアナウンスを読むタイミング、お金のやりとりの順番、車椅子のお客様がいる時の対応などまったくやり方が違うんです。アテンダントに声をかけようかと迷っていらっしゃるお客様の表情を読み取り、お客様よりも先にお声がけする先輩や、車内にいらっしゃるお客様の顔を瞬時に覚えるすごい先輩もいて本当に勉強になります。業務後はいつも日報を書き込み、「こんな嬉しいこと・困ったことがあった」「こんな時はこうしたらいいよ」といった内容を社内の全員で（社長も！）共有するのですが、一人ひとりが試行錯誤しながら、お互いに高め合える雰囲気がとてもいいなと思っています。

これから福井のまちがどうなっていけばよいと思いますか？

北陸新幹線の金沢開業や福井駅前の開発などに伴い、多くの方が福井に訪れてくださっています。少しずつ海外のお客様も増えていて、この前は新婚旅行中のイタリア人夫婦と車内で接する機会がありました。新婚旅行先が日本、しかも福井というのが嬉しかったですね。海外のお客様も利用しやすいよう、まち全体の案内表示がわかりやすくなれば、もっと多くの方に福井の良さを知っていただけるのではないかと思います。お客様の旅に少しでも関わることができるのは、アテンダントの醍醐味。これからもえち鉄の最前線でお客様と接しながら、快適にご乗車いただける時間をつくっていきたいと思います。

（text：石原藍　photo：出地瑠以）