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XSCHOOL2020

大雪もなんのその【第2回XSCHOOL】

本年度2回目のXSCHOOLが開催された1月10日、11日の2日間。

実はこのとき福井では、1月8日の明け方から雪が降り続き、9日には福井市で1mを超す積雪を記録するなど豪雪災害に見舞われた3年前に匹敵する大雪となりました。運営チームも福井駅前の拠点に集まれなかったり、除雪対応のため途中退出を余儀なくされる福井メンバーがいたりと、慌ただしさが漂うなかでの開催となりました。

そんな状況のなかでもほぼ全員が顔を合わせることができたのはオンライン実施だったおかげ。直接対面のコミュニケーションによって生まれるものを手放す代わりに、オンライン開催の大きな恩恵も受けているのだとしみじみ感じる出来事でした。

▲バーチャル背景で共有された大雪の様子

第2回XSCHOOL

さて、前回のXSCHOOLから3週間。この間受講生たちはそれぞれの自宅、あるいは職場やそれ以外のさまざまな場所で自らの「問い」の種を探してきました。

プログラムのゴールとしてプロジェクトやプロダクトのアウトプットを求めてきたこれまでの活動と異なり、テーマに沿った良質な問いをたて、問いに対するリサーチ自体を社会のリソースとして開いていくことを目的とした今期のXSCHOOL。問いに向き合った結果としてのリサーチが大切であることはもちろんですが、社会のリソースとしての質を高めるうえでは「なぜその問いに至ったか」というプロセスにも大きな意味があります。

今回のXSCHOOLでは、そのような思考プロセスを記録として残しながら、一緒に80日間を走り抜ける仲間たちと考えを共有していくために、「ワケワカラジオ from XSCHOOL2020」という新たな試みを取り入れました。ポッドキャスト作成ツールを使いながら、XSCHOOL各回の間に考えたことを各々がパーソナリティとなって短時間の「ラジオ風番組」として収録。互いの「番組」を聞き合うことで、それぞれの道程と現在地を確認していく仕組みです。

▲現在はYoutubeで3/6のカンファレンスの参加者に限定公開されているワケワカラジオ

 

第2回のXSCHOOLを迎えるにあたっても、受講生一人ひとりがポッドキャストを収録。気になった書籍の一節や、マンガやドラマの登場人物のセリフ、自分自身の体験などを紹介しながら、向き合いたい「問い」がどのあたりにありそうか、その仮の所在を共有しました。

本格的に「問い」を探す長い旅路へ

そんな経過を踏まえての第2回XSCHOOLは、グループに分かれてのディスカッションや個別のメンタリングを通して、ひたすら自らの「問い」を探す2日間となりました。思考を開き、記憶を辿り、もう一度暮らしのなかの当たり前を疑いながら、自らが考えていきたい「問い」を探していきます。

グループディスカッションでは、オンラインホワイトボード「Miro」も活用しながら思考を発散。グループメンバーからの関心テーマの共有をきっかけにして、議論を積み重ねていきます。

あるグループでは、「小児医療」と「遊び」の関係について関心をもつ参加者が、これまでのリサーチについて共有。障害や病気をもつ子どもたちとそうでない子どもたちの境界をいかに溶かしていくことができるのか、また、病院以外の生活の場にハビリテーション(成長)のエッセンスをいかに自然な形でもたらすことができるのか、そもそも日常のなかでは医療的ケア児の存在は不可視化されているのでは?など、ひとつの話題を起点にして、それぞれの観点から問いの種を次々と表出させていきました。

▲議論の内容はMiroで可視化

 

また、「問い」を考えるひとつの素材として、今回のXSCHOOLのアドバイザーである紅谷浩之さんが運営に携わる、長野県軽井沢町の在宅医療拠点「ほっちのロッヂ」の紹介も。

▲紅谷さん(左)と「ほっちのロッヂ」スタッフの唐川さん

 

訪問診療と外来診療、訪問介護と通所介護、病児保育という5つの事業を行う「ほっちのロッヂ」は、医療拠点という機能を持ちながらも、だれが来て、どんな過ごし方をしてもよいという性質も同時に持ち合わせています。

▲陽だまりが気持ちいい病児保育室

 

施設の利用者やスタッフの「好きなこと」や「心地よい時間の過ごし方」を大切にすることで「子ども」「高齢者」「障害」「健常」といった枠を取り払い、「ケアする/される」という関係性もあいまいにし、その景色自体を新しい文化として発信しようとするスペース。「ほっちのロッヂ」が伝えようとする景色は「わけるから、わからない😉 ーわたしと医療のほぐし方ー」というテーマに向き合う受講生にとって大きな刺激となりました。

輪郭を帯び始めた、それぞれの「問い」

グループディスカッションや個別メンタリング、受講生同士の対話など、2日間のプログラムを通して徐々にそれぞれの「問い」の輪郭が見え始めてきました。

 

「専門性がある人とない人の間にあるコミュニケーションの課題ってなんだろう?」

 

「医療者が患者に対して本音を伝えないのはなぜだろう?」

 

「日常とシームレスに医療とつながれる『保健室』を会社につくれるだろうか?」

 

「『生きたい』という気持ちの根源はどこにあるんだろう?」

 

「小児リハの『遊び』の質を高めるには?」

 

積み重ねられる議論のなかで、確実に深まりをみせていく受講生の思考。でも、それを一つの文脈として言語化し、「問い」にまで昇華させていけるかどうかは、また別の話。それぞれがプレゼンテーションの形でアウトプットできるまではまだしばらく時間がかかりそうです。

 

「次回まであまり時間はないですが、楽しみながら『地獄』を味わってください」。

プログラムディレクター原田祐馬さんからのそんな挨拶で幕を閉じた第2回のプログラム。
オンライン開催もなんのその、今年もやっぱりいつも!?の様相をみせてきたXSCHOOLなのでした。

 

text by Kaname Takahashi


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