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トライアルステイ2019

まちを観察し、「かけら」を残すこと。アーティスト・三上清仁さん  日本海トライアルステイ2019【後編】

越前がに漁が始まり、冬本番に差し掛かった11月の日本海に滞在したのは、広島県の尾道市に拠点を置くアーティスト・三上清仁さん。

▲尾道を拠点に活動する三上清仁さん(左)とコーディネーターの浅野桃子さん(右)。二人は東京芸大の学生だった頃からの長い付き合いだそう。言葉を選ぶようにぽつぽつと投げ交わす会話が側にいて心地良かったです(上記2枚写真/佐藤実紀代)

 

昨年に引き続き、今年もアーティストの滞在をコーディネートしていただいたのは、福井駅前でアーティストの交流拠点「HAI studio」を運営する浅野桃子さんです。ともに創作者であり、地域とアートの交流をつくる実践者でもあるお二人の眼に越廼のまちはどんな風に映ったのでしょうか。じっくりゆっくりまちを歩きながら、時間をたどって記された浅野さんのメモ&写真でお伝えします。


 

11/15(金)

三上さん、自家用車で福井へ。三上さんはすでに小野環さんとのアーティストユニット「もうひとり」の作品を尾道から持参し、車の中は作品で詰まっている。

昼食は、福井の日本海の海の幸、お刺身の定食。当たり前のように美味しいので、特別な感想もなかったのが贅沢。福井に留まらない、これからの世界、社会、未来のことをたっぷりじっくり。ひとつひとつの言葉をお互いしっかり受けて、大事に言葉を選んで話して、どんどん濃くなっていく。

滞在先に寄ってから、早速ここまで一緒に移動してきたその作品を持って、歩く。作品をこの土地に沿わせる、撮る。じっくりじっくり風景に歩を合わせながら。

ふと滞在先のご近所にある「田村水産」の田村さんが、福山ナンバーの車が止まっていたので覗きに来てくれる。豪快で優しい田村のお父さんに鱈をたくさんいただく。

田村のお父さん、民宿「よねや」のお母さんと、お母さんの入れてくれた美味しいコーヒー、揚げ饅頭をいただきながら、日本海を眺めながらゆっくりお話する。永いと感じられる時間、気持ちが落ち着く。もうすぐ福井の日本海の美しい夕日だよと言われ、しばし見惚れる。


11/16(土)

朝、私は福井駅前からバスで越廼地区へ。三上さんが言っていたように、湾をひとつずつ、曲線に体を任せながら進んでいくのは悪くない。予想通り、徐々に人もいなくなって、最後はわたしと運転手さんだけ。

民宿「よねや」さんに到着すると、雨が時折降る中、すでに三上さんは「よねや」さんの自宅部分の外壁に作品を設置中。

古い家屋の表面が剥がれてしまわないように、現代の建築資材で覆われた壁。その上に、木材のような顔をした(模した)壁面風のトタンで、切り取られた外来種のセイタカアワダチソウを貼る。その重なりについて三上さんと観察する。この家屋が取り壊されるまで、重なっているセイタカアワダチソウ。

「よねや」のお母さんは気に入ってくれたよう。大好きな植木鉢の位置や種類を考えたいという。素晴らしい。突然の設置申し出に快諾してくれたお母さん、ありがたい。

簡単に壊せるものだろうか、この風景を。わたしたちは夕日に体の前面を向けて海が美しいといい、三上さんとわたしは海に背を向けてこのまちは美しいといった。

次に作品を設置できる家屋を紹介してくれるという、「ワタリグラススタジオ」さんへ。そこで偶然にも三上さんが2年前に宿泊した農家民宿のオーナーと再会。どこにいたってタイミングは来る。

ワタリグラススタジオのガラス作品を堪能させていただいた後で、これもまた突然の申し出にも関わらず、自宅や作業場の外壁を提供してくれるという志野祐介くんと合流。志野くんはつい最近越廼地区に移住してきたという。つなげてくださったワタリさんに感謝。

まずはそのご自宅と製塩をするために改装中の作業場へ。三上さんの活動や作品について話し始めると、すぐに面白がってくれる。ここ越廼で自分が活動する場所に設置してほしいと。作業場の外壁、、、ではなくて、まずはその作業場の中にあった犬小屋へ設置。いい。中身は人とは限らない。

ご自宅ではお向いのおじいさんとおばあさんにも事情を説明をして作業開始。おじいさんとおばあさん、最初はほんの少し怪訝な顔をしていたけれどすぐに興味を持ってくれる。犬の「モモ」と一緒に話をしながら見守る。おばあさんは設置が終わるまで見ていてくれて、もっと派手な花が咲くのかと思ったと。でも感心してくれた。

志野くんのご自宅にはセイタカアワダチソウが何本も伸びた。青いビニールシートのセイタカアワダチソウも。志野くんもとてもうれしそうにして、越廼地区でこういうことももっとやりたいといってくれた。

こうして、越廼地区の3ヶ所に三上さんの作品が設置された。突然の設置依頼だったが、家屋が消えてなくなるまでそのままにすることを、みなさん受け入れてくれた。

今、作品たちは冬の日本海の荒い波と冷たい風に、越廼地区の風景として、さらされている。もうどこにでもない越廼地区の風景として。擬態してしまっている作品に目を向ける人はたくさんはいないかもしれないが、作品は必ずここにあり、その作品を通じて、三上さんとの対話を思い出しながら、この風景について不思議な感情が呼び起こされるはずだ。それは原始的で誰しもに備わっているような感覚かもしれない。

こうしてアーティストが越廼地区をはじめとして福井に滞在し、彼らの「かけら」が僅かずつ残った先に、福井は本当の豊かさを感じられる地域になるかもしれない。

 


 

今年も偶然の出会いや新たな関係が⽣まれた⽇本海トライアルステイ。

ファミリーやフリーランス、アーティストと多様な方々がそれぞれの目的で訪問してくださいました。

移住とツーリズムのあいだのような、ゆるやかな関係性。 訪問者によって新しい角度で切り取られる、自分たちの街。

その瞬間が重なっていくことで、次の私たちの街の未来を変えていくかもしれません。

訪問していただいた皆様、ご協⼒いただいた地域の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。

 

(text&photo  リアルローカル福井/佐藤実紀代)

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