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人の流れと営みを、地域に息づかせる力とは XSTUDIO福井プレゼンテーション・エキシビジョン 〜前編〜

2019年2月9日、「XSTUDIOプレゼンテーション/福井」がNICCA イノベーションセンターで開催されました。会場には、関係者を含め300人以上が集う大盛況。3つのスタジオ、30名のメンバーが、パートナー企業とともに育んできた120日間の成果を披露しました。

 

会場では、朝からメンバーたちが慌ただしく準備。これまでのリサーチの成果や試作の数々が展示スペースに並べられていきます。

 

開場とともに多くの来場者が訪れました。福井エリアはもちろん、石川、富山、そして東京・関西からの来場者も多く、企業で働く人、経営者、フリーランス、お子さんやお孫さん連れた方の姿がみられました。

▲会場は熱気で溢れています

 

▲地元の中学生の姿も

 

プログラムディレクターの内田友紀さんと多田智美さんの司会でスタートです。まずは福井市役所まち未来創造室の林岳宏局長の挨拶をいただきました。

 

▲「福井の基幹産業である繊維をテーマに、県内外の人がどのようなアイデアを披露してくださるのか、楽しみです」と林局長

 

今回、福井プレゼンテーションのゲストレビュアーとしてお越しいただいたのは、このお二人。

書籍、雑誌をはじめさまざまなメディアでの編集ディレクションや美術展への出展、オンデマンドのTシャツショップやオンライン出版サービスの立ち上げ、デザインユニット「NNNNY」メンバー、大学教授など、多様な分野で活動を展開している、編集者の伊藤ガビンさん。

 

▲一貫して「面白いものを世に出す」活動を展開している伊藤ガビンさん

 

そして家電メーカーでのプロダクトデザインを経て、広い産業分野においてコンセプトメイキングからプロダクトアウトまでをトータルにデザインする「デザインマネジメント」の実践者である、デザイナーでMTDO Inc.代表取締役の田子學さん。

 

▲国内外でさまざまなデザインアワードを受賞している田子學さん

 

いよいよ各スタジオの発表がスタートです!

<STUDIO A>異業界の人たちに届ける、テキスタイルからの招待状

スタジオリーダーの杉本雅明さん(起業家/エレファンテック株式会社副社長)とローカルリーダーの新山直広さん(デザイナー/TSUGI代表)率いるSTUDIO Aは、パートナー企業の明林繊維株式会社とともに、「多くの人と繊維業界をつなげるプラットフォームづくり」を進めてきました。

 

▲スタジオリーダーの杉本さん

 

明林繊維がメインに扱うのは、キュプラやアセテートをはじめとする再生セルロース繊維。自然由来のデリケートな素材で、風合いがよく美しいシルエットを作れることから、国内・アジアはもちろん欧米のトップメゾンにも採用されています。

▲再生セルロース繊維について語る明林繊維の村上貴宣社長

 

福井は日本有数の繊維産地ですが、職人の数が減り、縮小しているのも事実。普段繊維とは接点のないような異分野の人たちが、福井の布の価値に気づくことで、新しい可能性が開くのではないかと考えました。

そこで名づけたプロジェクト名は「TEXTILE INVITATION」=布(つくり手や産地)からの招待状。

 

 

多くの人と布との新しい出会いを生む仕組みをつくりだすため、さまざまなコミュニケーションツールを考えました。

 

▲設計、物性、感性、ストーリーの4つの角度から布地の特性を伝える、これまでにない「デスクトップ型」の生地サンプル

 

▲布にまつわる背景を紹介したZINE

 

なかでも、STUDIO Aが参考にしたのが「ワイン」。ぶどうをつくる人やワインの醸造方法を決める人がいるように、布にも生産者や設計者がいます。ワイン好きは味わいの「理由」を理解して楽しみ、その風土を味わいに、産地を訪れたくなるもの。布の世界でも、ワイナリーのような出会いやテロワールを体感できる場ができないだろうか……。

 

答えは意外にも身近な場所にありました。それは、明林繊維の倉庫。

さまざまな布地がストックされている倉庫は、これまで社員の人も好んで行こうとしない場所だったそう。しかし、この倉庫の佇まいに惚れ込み、場所の可能性を確信したスタジオメンバーたちは、倉庫を布と出会いの場所「itoteki」として演出。今後、多くのクリエイターを県内外から呼び込んでいきます。

 

▲今後の動きが楽しみな「itoteki」

 

▲最後はメンバー全員から、今後に向けた決意表明が行われました

<STUDIO B>メンバーの興味関心から「ハイパーリンク」の可能性を探る

 

スタジオリーダーの萩原俊矢さん(Webデザイナー、プログラマ)とローカルリーダーの森一貴さん(コンサルタント/ハルキャンパス主宰)率いるSTUDIO Bでは、メンバーの興味関心を起点に、パートナー企業・ジャパンポリマーク株式会社のコア技術「くっつける」を鍵に、5つのプロジェクトを発表しました。

 

▲スタジオリーダーの萩原さん

 

1つ目のプロジェクト「hatta!」は、人にやさしいものをつくりたいという想いからできた、壁や家具に貼ってはがせて、子どものケガを防止するやさしいクッション。メンバーの1人が偏愛を注ぐ、「ダブルラッセル」という3層構造の福井産素材と、ジャパンポリマーク社の接着技術を掛け合わせて生まれたものです。

▲今後、建築やステーショナリー分野での応用にも期待

 

「FUKUI TEXTILE」プロジェクトでは、同じくダブルラッセルの生地に、ジャパンポリマーク社の技術で文字や絵を昇華転写した提灯をつくりました。

福井の繁華街「片町」は繊維の問屋街の近くにあり、昔は接待で繊維業界の人たちが多く訪れていたそう。福井でつくられた繊維で、福井の新しい景観をつくる、「景観の地産地消」の実践です。

 

▲ダブルラッセルの生地は厚みがあり丈夫。デザインも自由自在です

 

「気持ちが落ち着く夜に外を歩きたい、でも暗くて怖い」という悩みを持つメンバーが生み出したプロジェクト「fukucco」は、女性専用のコミュニティ。「夜道の怖さ」をきっかけに、女性のさまざまな悩みを気軽に共有できる場の提案でした。

 

▲「fukucco」のプレイベントは4月に開催予定!

 

STUDIO Bは、活動を通して、福井の伝統工芸にも着目。1500年以上続く越前和紙をジャパンポリマーク社の技術でアップデートできないかと、同社の吉川研究員を中心に「越前和紙の技術拡張に関する実験と考察」を展開し、「燃えない和紙」や「冷たい和紙」といったアイデアが試みられました。

 

▲今後、研究者による研究者のための勉強会を開く構想も

 

最後に発表されたのは「エイリアン」というアーティストインレジデンスのプログラム。

ジャパンポリマーク社をはじめ、福井には長く続く独自の技術を持つ企業が多数あります。そんな福井の企業と国内外のクリエイターが日常的にコラボレーションできる仕組みをつくり、XSTUDIOや鯖江の工房開きイベント「RENEW」で醸成されてきた、福井の「チャレンジできそうな、ワクワクする空気」が、自立的に継続していくことを目指します。

▲社長輩出率全国1位の福井。多くの企業とのコラボレーションが期待されます

<STUDIO C>手を動かし、レースの「よさ」を探った120日間

スタジオリーダーの吉行良平さん(プロダクトデザイナー)とローカルリーダーの坂田守史さん(プランナー)率いるSTUDIO Cは、パートナー企業・荒川レース工業株式会社が製造するレースの「よさ」の本質を考えた約120日間を過ごしました。

 

ものから感じる「よさ」とは人それぞれ異なるもの。STUDIO Cでは、荒川レースに通いつめ、製造現場や製品にふれながらレースの「よさ」を発見していきました。

 

▲「よさ」とは何か、熱く語るスタジオリーダーの吉行さん

 

大切にしていたのは、言葉による意味づけをせず「とにかく手を動かすこと」。どんなものが生まれるのか、予測できない状態でつくり続けることで、手と脳が直結していくような感覚になっていったそう。

レースを使った絵本や、「見えるようで/見えないようで見える」レースの特性を生かしたカーテンのようなもの、樹脂や漆を塗ったレースなど、試作はなんと250種類以上にものぼりました。

 

▲一見、何に使えるのかわからないものも数多く生まれました

▲レースの「よさ」が“わかる”“なんとなくいいなと思う”など、来場者のみなさんも手を上げて感想を表現

 

さらにメンバーたちが手を動かす過程で注目したのが、レースの柄と柄をつなぐ「地組織」。普段は目立たない存在ですが、地組織だけのレースをつくってみたところ、2倍以上に伸びるレースや、スポンジのように汚れ落ちに効果があることも発見しました。

 

▲地組織レースはとにかくよく伸びます

 

▲レースのクロスは、食器はもちろん、野菜の皮もとれます

 

「120日間の活動は、レースの可能性を探る原石探しだった」と、荒川レース工業の荒川道子さん。この活動を今後も続けることで、職人の高齢化や後継者問題など、さまざまな課題を抱える福井の製造業がもっと元気になれば……と、レースを使った探求の場「ARAKAWA RACE LAB」の始動も発表されました。

▲これからもレースの「よさ」と向き合っていきます

 

展示スペースも大賑わい!

 

プレゼンテーション以外の時間も、会場は大きな盛り上がりを見せ、展示ブースのいたるところで人だかりができていました。会場のNICCA イノベーションセンターは、日華化学の基礎研究や商品開発が行われている研究施設ということもあり、当日は、会場パートナー・日華化学株式会社の有志の社員さんによるブースも登場!

 

▲「熱反応」を専門にする日華化研究員によるコーヒースタンドは来場者から大人気!

 

▲日華化学の研究を楽しく紹介したブースも

 

各スタジオのブースでは、メンバーの説明に聞き入っている方や……

 

 

試作したサンプルを手にとる方たち。

 

 

実際に使い心地を試すことができるコーナーも。

 

 

企画書を真剣に読み込む中学生の姿も印象的でした。

 

まだまだ続くXSTUDIO 福井プレゼンテーション。後半はゲストレビュアーをまじえたクロストークやエキシビジョンの模様をお届けします。どうぞお楽しみに!


text:石原藍 photo:片岡杏子


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