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「地域を編み、育てる事業をつくる」トークイベントレポート〜第三回ワークショップ〜

XSCHOOL第三回ワークショップでは、福井と福岡・八女で活躍する3人のゲストをお呼びし、トークイベントを開催しました。地域に根づく魅力的なもの・こと・文化を活かしながら事業をつくっている3人のリアルな話に、満員の会場は大盛り上がり! 今まさに一歩を踏み出そうとしているXSCHOOLの参加者たちにとっても、新しい気づきと出会いの場になりました。今回はトークセッションの内容を中心に、長編でお送りします!

地域資源を発掘し、再編集する

XSCHOOLの特別企画として行われた「地域を編み、育てる事業をつくる」トークイベント。

最初にお話してくださったのは、福岡県八女市で古民家を改装したアンテナショップを起点に、小売・商品開発・通販・イベントなど幅広い事業を展開している「うなぎの寝床」の白水高広さんです。

■白水高広/株式会社うなぎの寝床 代表取締役

佐賀県生まれ。大分大学工学部福祉環境工学科建築コース卒業後、個人事業としてデザインの仕事を始める。その後3年間、「九州ちくご元気計画」の主任推進員として福岡県南部・筑後地域の商品開発やブランディングを行い、任期後の2012年、大学からの友人である春口丞悟氏とともに「うなぎの寝床」を立ち上げた。

 

白水:「うなぎの寝床」を始める前のことからお話したいと思います。大学卒業後にグラフィックデザインの仕事を個人でやっていたところ、県庁からの誘いで「九州ちくご元気計画」に携わることになりました。ものづくりが盛んな筑後地方で行われた、デザインの視点を取り入れた雇用創出のためのプログラムです。私は商品開発やブランディングのお手伝いをし、野菜ソムリエの若手農家が季節の農産物や加工品を販売するうきは百姓組や、国産の線香花火の価値を見直し、ブランディングに成功した筒井時正玩具花火製造所など、3年間で100件以上の案件を手がけていました。


任期が終わった2012年、福岡県八女市に「うなぎの寝床」をオープン。「九州ちくご元気計画」での経験をもとに培った”地域資源を発掘し、伝える編集的な方法”を実践するべく、お店では日々実験と検証を繰り返しているのだそうです。

 

白水:「うなぎの寝床」はもともと提灯屋だった明治後期の伝統的建造物を借り、什器は自分たちで手づくりするなど、ほとんどお金をかけずに準備しました。お店で仕入れるものは“車で一日圏内”で訪れることができる作り手の商品と決めています。そうすることで、実際に足を運んでものづくりの現場を見ることができますし、情報提供やもしもの時のアフターケアも迅速に対応ができるからです。

 

アンテナショップのイメージが強い「うなぎの寝床」ですが、あくまで拠点に過ぎないという白水さん。定期的なイベントの開催やメディアへの情報発信に加え、メーカーや研究部門としての側面もあるそうです。

▲「うなぎの寝床」は実験と検証を積み重ねだと言う、研究者気質の白水さん。

白水:「うなぎの寝床」ではメーカーとして久留米絣の織元と組んで”MONPE(もんぺ)”の製造・販売を行っています。これまで、もんぺはなかなか私たちが着られるようなものがなかったのですが、もんぺの着心地の良さや使えば使うほど増す久留米絣の風合い、日本で初めての”ズボン型”と言われている文化的背景など、魅力的な要素をしっかり調査して掘り起こし、認知度を高めていきました。今ではもんぺだけでなくその型紙も販売するなど商品も展開し、年間通して約1万本を生産しています。着心地や風合いといった「機能的要素」と歴史などの「文化的要素」、デザインやイメージ「視覚的要素」が揃っていたことが、受け入れられた要因だと思っています。

DIYの精神がすべての基本になっている

二人目はデザイン事務所を経営しながらも福井の片町や浜町に若者が集える拠点をつくり、いつも福井にニューウェーブを起こし続けているHUDGE co.,ltd.の内田裕規さん。

■内田裕規/HUDGE co.,ltd.代表

福井県生まれ。デザイン会社「HUDGE co.,ltd.」の代表として、福井を起点にさまざまな生産者や企業のデザインを手がける。文化創造拠点として立ち上げたFLAT project創設メンバー。2016年、「北陸の工藝の未来へ橋をかける」をコンセプトに「CRAFT BRDIGE」開業。

 

内田:グラフィックデザインを生業としながら、福井市内のビルを再生した「FLAT」や「CRAFT BRIDGE」、不動産や古民家再生にも携わっています。福井駅から徒歩15分くらいのところにある「FLAT」は、2009年に仲間が買ったビルをデザインと食の拠点にしようとみんなでリノベーションした場所です。いろんな人たちが渦巻きのように関わりながら盛り上がっていける場を、とIDEEのライフスタイルショップを立ち上げた黒崎輝男さんにアドバイスをもらいながら作り上げていきました。また、2016年の9月にできた「CRAFT BRIDGE」は、福井にある工芸を世界に橋渡しようという目的で、クラフトビールのお店や日本酒バー、シェアオフィス「MIDORI.so」が入った複合ビルになっています。

デザインの枠を超えて、さまざまな事業を横断している内田さん。
クリエイティブな仕事をする上で大切にしていることが2つあるそうです。

その一つは「旅」。

内田:移動距離とクリエイティブは比例していると思っているので、日本を飛び出し、アメリカやオーストラリアに行くことがあります。そこで見たものや感じたもの、食べたものはあらゆる場面で活かされています。例えば「CRAFT BRIDGE」の中にあるクラフトビールのお店でも、世界中を旅して出会ったものがメニューに取り入れられています。


もう一つは「DIY」。自ら手を動かし作ることで、仕事の領域もどんどん広がっていくのだと言います。

内田:2011年の東日本大震災をきっかけに生きる本質に立ち返ろうと、実験的に無農薬無化学肥料の米作りに挑戦しています。お金を払って買えばそれで終わり。お米や野菜がどんな風に育っていくか、知ればもっと興味が湧くし、それを自分で作ることができればさらに面白くなる。自分の子どもたちにもお金がなくても作ることができるんだ!という体験をさせたくて、友人の大工に弟子入りさせてベッドと机を作ったこともありました。すぐに飽きちゃいましたけどね(笑)。イチから作るのはものすごく大変なのですが、経験したからこそ生まれるものがあると思うんです。

 

仕事と遊びと線を引くのではなく、すべてが繋がっている。軽やかにいろんな事業のタネを蒔いていく内田さんの様子に、勇気づけられた人も多かったのではないでしょうか。

水と米が美味しい場所だったら生きていける

最後に登場したのは、牛久保星子さん。福井駅前のニシワキビルを再生する株式会社舎家 代表取締役であり「クマゴローカフェ」のオーナーでもあります。

■牛久保星子/クマゴローカフェオーナー、株式会社舎家代表取締役

群馬県生まれ。都内でスープ専門店の店長などを務めた後、地域おこし協力隊として2014年に福井県へ移住。2015年、福井で開催されたリノベーションスクールをきっかけに、2016年3月、福井駅前の空きビルを再生した「クマゴローカフェ」をオープン。同年11月にはreallocal福井をリリースした。

 

牛久保:すみません、デザインも何もやってない素人で恐縮なのですが(笑)、こんな私でも起業できました!という例として聞いていただけると嬉しいです。もともと私は東京で飲食関係の会社に勤めていましたが、ハードワークがもとで倒れたことをきっかけに、地方で暮らそうと思い立ちました。そこで、地域おこし協力隊の説明会に行くと、福井って何だか面白そうだぞと、興味を持つようになったんです。そんな時に偶然にも『福井人』という本や日本酒の「花垣」にも出会い、日本酒が美味しいなら水や米も美味しいに違いない! ここなら生きていけると福井に移ることを決めました。

 

牛久保さんにとって大きな転機となったのが、2015年6月に参加した「リノベーションスクール」。
福井駅前のニシワキビルを生まれ変わらせるべく、カフェやシェアハウスを盛り込んだプランを提案したところ、「そのプランは誰がやるの?」と言われてハッとしたそうです。

 

牛久保:「誰がやるの?」って言われた時に「あぁ、私か!」と。腹をくくりましたね。衝動に身を任せて地域おこし協力隊を辞めることになりましたが、腹をくくった分、本気になってくれる仲間が増えたと思います。人が敷いたレールより、自分で敷いたレールの上を歩く方が楽しいじゃないですか。もちろん大変なこともあるけれど、結局私の人生、何が大事かって言うと、「本気で何回泣けたか」だと思うんですよね。

▲自分の言葉で語る牛久保さんの話には説得力があります。

“身近な食を当たり前に丁寧に。一緒に美味しく。”をコンセプトに20163月末に完成した「クマゴローカフェ」。もともとは居酒屋 熊五郎というお店で、地域の人から愛されたお店だったことからこの名前がついたそうです。

牛久保:このビルで作業していると、通りがかったおじいさんから「昔、熊五郎でバイトしてたよ」「あんた、娘さんか?」なんて言われたりすることも(笑)。クマゴローカフェは始まったばかりなので毎日が試行錯誤ですが、居酒屋 熊五郎のように愛される存在になりたいですね。

3人の本音が飛び出したパネルトーク

この後はXSCHOOLの講師を交えたパネルトークが行われました。
さらに3人の思いや考え方の深部に迫っていきます。

ーー原田:お話を聞いて、3人に共通してる「誰がやるの?」という部分が重要だと思いました。どのように“はじめの一歩”を決断されたのでしょうか?

 

白水:大学の頃から普通の会社員のように規則正しい生活はできないと思っていたので、個人でやっていくことを決めていました。お金がなくても生きられる自信が何となくあったんですよね。3年間「九州ちくご元気計画」をやっていて、いろんな人と事業者をつなげて商品を作りましたが、その後、意図と違う売り方をされたこともあったので、自分でやってしまった方が早いなと思いました。ツールが足りないときも外部に発注するより自分の事業にしてしまった方が時間も短縮できる。スピード感を大事するあまり、自分でお店をやるようになった感じですね。

 

牛久保:東京では下町のシェアハウスに住んでいました。一緒に住んでいた人や周りの友人たちは、お金はないけど、みんなそれぞれの生業を持ってすごく楽しそうだったんですよね。この人たちとずっと一緒に居られるよう、自分も楽しいことをし続けよう。その人たちに恥ずかしくない生き方をしようと思っていました。東京ではセンスが良くかっこいい会社に勤めていましたが、かっこいいのは会社であって自分ではない。自分の旗ではないなと思いました。どうせなら、自分で旗をあげるようになろうと。それで腹をくくれるようになりました。

 

内田: 自分はブルースリーの「Don’t think,FEEL!」で生きてきたんですよね。「考えるな!感じろ!」ってね。失敗も多かったですが、自分の勘や感覚を大事にしてきたのは間違いではなかったんだという自信が蓄積されてきたんだと思います。だから腹をくくらないといけないポイントが来ても、自分の感覚がOKならば進んでいける。少しずつ感覚が研ぎ澄まされていったのだと思います。後はくじけそうになったらアントニオ猪木の「道」ですね。行けばわかるさ、です。(一同爆笑)

ーー原田:ことを起こすのは簡単ですが、続けるのは大変だと思います。白水さんは「うなぎの寝床」を5年続けてみていかがですか? 続けるメソッド的なものは学校でも習わないことだと思うのですが、師匠のような存在などいらっしゃったのでしょうか?

白水:そういう人はないですね。基本ネガティブなので、できるだけリスク回避するようにはしていますが……。計画性はありそうで実はそんなにないんです(笑)。ただ、トライアンドエラーはよくしますし、仮説もよく立てます。失敗したとしてもまたトライすれば良いので、落ち込むこともありません。あとは人に任せることを徹底していますね。自分たちでやるべきこととやらなくてもいいことは常に考えています。


ーー萩原:お話を伺って、3人に共通するところは自分で道を作ることだと思いました。道ができると仲間ができて、できることも増える。では、自分で道を作りつつ、人に任せる(役割分担の)コツやコアとなるメンバーに出会うためにはどうすれば良いのでしょうか?

 

白水:まずは一度、自分がパンパンになるまで全部やってみて、できなくなったり向いていないとわかったら得意な人に任せるようにしています。グラフィックデザインもたまたま自分でできるからやっていますが、基本的にいつやめてもいいと思っています。

 

牛久保:やりたいことはいつもたくさんあるんですが、簡単に具現化できない時は、周りに言うようにしています。声に出していると助けてくれる人が現れる。普段から自分の弱い部分やぶっちゃけた素の自分を出しているので、「仕方ないなぁ〜」と見かねた仲間が助けてくれるのだと思います。

 

内田:20代の時は、何かやりたいことがあっても仲間がいないというのが、大きな悩みでした。その時は24時間デザインのことを考えているくらい、自分のスキルを伸ばしましたね。そうすると、30代になって自然と仲間が集まるようになりました。縁っていうのは自分のスキルがあるから寄ってくるし、吸い寄せられるのだと思います。だから、まずは自分を磨くことが大切なのかもしれませんね。

ーー高橋:私はプロダクトデザインの勉強をして無印良品に入社しましたが、牛久保さんの言葉を借りると「自分の旗じゃないな」と思い、退職して今は常滑に移住しています。ここにいるXSCHOOLのメンバーはみなさんの後を追いかけている存在なのですが、そんな私たちにおすすめの本を教えてください。

 

白水:実は古本屋をやりたかったくらい本が好きなんですよ。最近読んでるものはジャン・ドゥーシュの『進化する遺伝子概念』やニコラス・ウェイドの『宗教を生み出す本能』です。昔からの変遷がわかる本は、過去の事例を読み解くことで、今抱えている問題の解決策につながることも多いですね。

 

牛久保:ランドスケープ・デザイナーの田瀬理夫さんのことを書いた西村佳哲さんの『ひとの居場所をつくる』はクマゴローカフェのヒントにもなっていますね。あとは茨木のり子さんの『詩のこころを読む』もお気に入りです。人の一生に沿った数々の詩が紹介されている本で、私は今この本の中でどの部分いるのだろうと思い、よく読み返しています。

 

内田:私は岡本太郎さんの『自分の中に毒を持て』ですね。あるとき、もっと毒を吐いた方がいいよと言われたことがありまして(笑)。その時に出会った本なのですが、いつ読んでも岡本太郎節にパワーをもらっています。

 

最後はXSCHOOLの参加者からも質問が飛び出しました。

ーー参加者:福井県出身ということもあり、今いる場所を離れて福井で何か始めようかと考えることがあります。仕事や暮らしなど条件を考えていると、お金のことはもういいやと思ってしまうことも(笑)。福井のこれからの可能性についてどう思われますか?

白水:お金のことはちゃんと考えた方がいいですね(笑)。全国各地で頑張っている作り手はたくさんいるので、福井に限らず、どこの土地にも可能性はあると思っています。まずは自分がどの土地で腰を据えるのかを考え、そこからひたすらトライアンドエラーを繰り返すと見えてくるものがきっとあると思います。

 

内田:今の福井は仲間を集めやすいですし、県外からもキャッチしてもらいやすい。一億総メディア時代と言われているので、もちろん可能性はあると思います。お金はもちろん大事ですが、私はあくまで道具の一つだと思っています。

 

牛久保:私は選んだ場所がたまたま福井でしたが、『福井人』や「花垣」に出会って、すでに発掘されたような場所はやめようと思いました。福井には石ころみたいに落ちてるものが、実は磨けば光るものばかり。ここなら傍観者ではなく、みんなが主人公になれる! 福井はそんな場所だと思っています。

 

ほかにも、地方都市での仲間づくりや家業存続のためのアドバイスなど質問は尽きず、大盛況の中、トークイベントは幕を閉じました。

XSCHOOLの参加者たちは3人のお話を聞いて、これから進む道への新たなヒントを得ることができたのでしょうか。第四回ワークショップもどうぞお楽しみに。

 

(text:石原藍 photo:片岡杏子)


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